再逮捕とは?逮捕は何回まである?
- 2024年7月16日
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この記事で分かること
逮捕には原則がある
刑事事件の手続きにおいて警察や検察が行う逮捕や勾留は、本来ならば国民に保障されている移動の自由を奪い、捜査当局が被疑者の身柄を拘束し取調べを行うことです。
その際、いくら刑事事件の被疑者であっても、国民の自由を国家権力の都合で奪うにことには制限が付けられていて、逮捕や身柄の拘束を行おうとした場合には裁判所がその行為が正当かどうかを見極め、許可あるいは不許可の判断を下す必要があります。
そして許可された場合、捜査機関による逮捕に伴う身柄の拘束は最長で72時間、勾留では延長期間も含めて最長20日間という期限が設けられています。この逮捕には、捜査当局が権力を乱用して不当に被疑者の自由を奪うことがないように、いくつかの原則があります。
同一事件の逮捕・勾留は一回だけ
逮捕には、「逮捕前置主義」、「事件単位の原則」、「逮捕・勾留の一回性の原則」といった原則が存在します。これらの前提となるものは、憲法第33条に規定されている「令状主義」に基づくものです。
これは刑事事件において、現行犯逮捕を除き、前述した通りに裁判所が逮捕の許可を出し令状を発布しない限り逮捕は行われないという規定です。
そして刑事事件の手続きにおいて、被疑者の身柄を拘束するためには、まず勾留の前に逮捕を行わなければならないという「逮捕前置主義」があり、その逮捕は人ではなく事件を基準にしたものではならないという「事件単位の原則」を踏まえ、令状の発布による司法のチェックがなされるという前提が成立するのです。
また同一事件の逮捕と勾留は一回だけという「逮捕・勾留の一回性の原則」があり、捜査当局の権力乱用による不当な逮捕を防ぐといった取り決めがあります。
その結果、時間を別にして同一事件の逮捕や勾留を繰り返してはならないという「再逮捕・再勾留の禁止」や、一つの罪を行為で分けて逮捕や勾留を行ってはならないという「一罪一逮捕一勾留の原則」が導かれます。
しかし再逮捕や別件逮捕が行われる
以上のように、さまざまな逮捕の原則により、一つの事件に関する逮捕は一回のみと規定されているのですが、現実的には再逮捕や別件逮捕、再勾留は日常的に行われています。実際には起訴前であるにもかかわらず、勾留満期を越えて身柄を拘束されている被疑者もいます。
再逮捕や別件逮捕は、ある意味捜査当局の権力の乱用とも言える手続きですが、重大な事件や特定の罪状については頻繁に用いられている手段ですので、自身で罪を犯してしまった場合や、家族や友人・知人が逮捕されてしまった時には、知っておくべき知識であると言えます。
一方、刑事訴訟法上でいう再逮捕とは、現行犯逮捕で被疑者の身柄を拘束したものの、逮捕に必要な要件を満たしていなかったため違法とされ勾留などの許可が下りず、改めて緊急逮捕などで逮捕をし直すことを指します。
この場合は一つの事件について二回の逮捕が行われるため、一般的に言われている再逮捕とは違いますが、あくまでも手続き上の問題となりますので、被疑者にはあまり関係がないと言っても良いでしょう。
そのため本項では、一般的に言われている再逮捕、いわゆる異なる被疑事実について同一の人を逮捕すること、について説明していきます。
再逮捕とは?
通常、刑事事件の被疑者として逮捕されてしまったら、逮捕期間と言われる警察での48時間と検察での24時間の3日間に加え、勾留が認められると10日間、勾留延長でさらに10日間と、一度の逮捕で身柄が拘束されるのは最長で23日間となります。
しかしこの期間で捜査当局が十分な証拠を集められなかった場合や、被疑者の供述を得られなかった時には、再逮捕を行ってさらに被疑者の身柄を拘束して捜査を進めていくという方法があります。
前述した通り、一つの事件について二回の逮捕を行うことは原則として認められていませんから、別の事件、いわゆる被疑事実で逮捕することになります。
複数の被疑事実がある場合に行われる再逮捕
捜査当局が再逮捕に踏み切るケースとは、十分な証拠や証言が得られなかった場合に加え、事件の数が多すぎて23日間では立件に十分な捜査ができなかった時となります。つまり被疑者の逮捕容疑が複数ある場合、最初の逮捕と勾留期間が満期になった直後、あるいは直前に、もう一度別の容疑で被疑者を再逮捕するのです。
この再逮捕は、詐欺事件のように被害者が多くいる場合など、取調べに時間がかかり、通常の身柄拘束の期間では事件の全容を解明できないと考えられる場合に、捜査当局にとって有効な手段とも言えます。また捜査を行っている段階で、被疑者に別の犯罪事実が明らかになった場合にも、余罪での再逮捕が行われることがあります。
とは言え、複数犯で被害者が数十人もいるような詐欺事件の場合には、それぞれの立件を行っていてはキリがないため、ある程度まとめて起訴されることになりますので、一件ずつについて逮捕され長期にわたる勾留を受けることはないと考えられます。
最初から再逮捕を行う見込みがある事件
複雑な事件、あるいは重大な犯罪の場合には、捜査機関が最初から再逮捕を視野に入れている時があります。例えば殺人事件の場合に、背後関係が複雑なケースになると、被害者の遺体を遺棄したという死体遺棄罪で逮捕しておき、さらに殺人罪で再逮捕してゆっくり取調べを行うという手法が取られることがあります。
これはテレビニュースでもよく聞かれるケースですが、殺人の犯人として逮捕されたはずの容疑者の罪名が、最初は死体遺棄罪ということで疑問に思う人も多いことでしょう。そこには、再逮捕を行ってさらに長期間にわたり被疑者の身柄を拘束し、十分な捜査を行いたいとする捜査機関の意図があるのです。
再逮捕はどう行われる?
再逮捕の流れは、最初の逮捕とまったく同じ手続きとなります。しかしそのタイミングは、最初の逮捕後の勾留期間が満期になり釈放された直後、または勾留期間中に次の逮捕が行われるなど、状況によってさまざまとなります。
勾留期間が満期になった後の再逮捕は、被疑者はいったん留置場から出され釈放されて自由の身になりますが、留置場の出口、あるいは警察署の前などで、事件の捜査を担当していた捜査官が自由になった被疑者を待ち構えています。
そして捜査官は、「○○、△△の容疑で逮捕状が出ている!」と新たな逮捕状を突きつけて身柄を拘束してしまうのです。
精神的な揺さぶりが狙い?
複雑な事件の捜査を十分に行うために再逮捕が利用されるケースは、刑事事件の捜査を行う上での方法として、一般人から見ても理解できます。逮捕に伴う23日間の身柄拘束では、裁判において正当な判断が下されるだけの証拠や証言を得ることができないというのも頷けます。
しかし時には再逮捕を、容疑を否認する被疑者の心を揺さぶる精神攻撃の手段として使われているとしか思えないケースも存在します。これは逮捕と勾留の期間中に、被疑者が頑強に容疑を否認するか、あるいは自供以外に起訴に至る有効な証拠がないような事件の場合によくあるとされます。
23日間も留置場で不自由な身柄拘束の生活を強いられ、やっと自由になれると思った瞬間に、再び最長で23日間の身柄拘束が始まると知った被疑者の多くは、大きなショックを受けてしまうのです。いったん留置場から出される際に、検事から出された釈放指示書が読み上げられ、ようやく普通の生活に戻れると思った直後に再逮捕されてしまうのです。
勾留中に預けてあった私物もすべて一度は返却されるため、被疑者としてはまさかすぐに再び逮捕されて留置場に逆戻りすることなど、つゆとも思わないでしょう。それまでは頑なに犯行を否定していても、罪を認めないとずっと留置場から出ることはできないのではないかと考えてもおかしくありません。再逮捕によって精神的なダメージを負った被疑者が、その後の取調べで態度を変えるかどうかは一概にはいませんが、警察の言う通りに罪を認めてしまうことも珍しくないと言われています。
犯してもいない罪で逮捕されていた場合には、冤罪を生み出す可能性が高まってしまいますし、再逮捕を認めざるを得ないくらいの容疑事実がある人に対しても、法令上では問題ないとされているとは言え、人を騙すような行為となる警察や検察の再逮捕の進め方については、問題があると言えるでしょう。
再逮捕が行われる可能性が高い犯罪
再逮捕が行われる傾向が強い犯罪は存在します。例えば、一般人が巻き込まれやすい犯罪としては、覚せい剤などの薬物系が挙げられます。まず覚せい剤の不法所持で逮捕されてしまった場合には、当然使用の罪も疑われますので、当然の再逮捕と言えるかもしれません。
覚せい剤などは、所持と使用を検察が別個に逮捕状を請求でき、裁判所は発布します。覚せい剤所持については、家宅捜索などで捜査官が覚せい剤らしきものを発見すれば、その場で簡易鑑定を行い、現行犯逮捕することも可能なのです。
その後逮捕した容疑者に尿検査などの科学捜査を行い、鑑定結果が出た後に覚せい剤使用で改めて逮捕状を取り再逮捕するのです。また、振り込み詐欺など被害者が多数いる場合には、被害者一人ひとりに対する事件として立件することが可能なので、共犯者の存在や資金の流れなど事件の全貌が明らかになるまで再逮捕が繰り返されることがあります。
同様に、加害者が複数いる集団での強制性行等罪などでは、余罪が出てくる余地が大きいため、新たな被害者が見つかり次第、再逮捕の手続きが行われる可能性が高いと言えます。
再逮捕されてしまったら
再逮捕は、最初の逮捕と手続き上は何の変わりもないので、最初に逮捕されてしまった場合と対応方法は同じです。できるだけ早く弁護士に相談し、身の振り方や対応方法について相談をすることをお勧めします。
有能で経験を積んだ弁護士であれば、まったく再逮捕が予想できないというわけではなく、過去の例や捜査状況を勘案して、その可能性を前もって教えてくれることでしょう。
家族や友人・知人が逮捕されてしまった人は、いつまでも続く勾留に不安が募るかもしれませんが、少しでも被疑者のためになる方法を弁護士に尋ね、十分なサポートをすることが望まれます。
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