盗撮による現行犯と後日逮捕、罪状や刑罰に違いは出る?

現行犯逮捕された犯罪者

盗撮で現行犯逮捕される場合

同じ内容の盗撮行為について逮捕された場合であっても、盗撮行為に及んだその場で現行犯逮捕されるのか、後日自宅等に警察がやってきて通常逮捕されるのかで、身柄が拘束されるまでの流れが異なります。

今回は、盗撮案件において、現行犯逮捕と通常逮捕によって、それぞれ逮捕までの流れがどのように違うのか、罪状や刑罰が変わってくるのかを説明します。

盗撮で逮捕される場合の多くが、盗撮行為に及んでいる際に犯行が現認されて現行犯逮捕されるケースとなります。まずは、現行犯逮捕された場合についてみていきます。

現行犯逮捕とは?

現行犯逮捕とは、犯罪行為が行われているまさにその場で、逮捕令状なしで逮捕できるものを言います。

本来、逮捕とは、身体拘束を強いるもので人権侵害をするものでもありますから、裁判所が発付する逮捕令状がなければできないものです。しかし、現行犯逮捕の場合は、裁判所の令状発付を待っているようでは犯人に逃げられてしまいます。

また、犯行の証拠も隠滅されるおそれがあります。現に目の前で犯罪が行われている以上、確実に犯罪があり、犯人である可能性もかなり高いはずです。そのため、逮捕令状なしで、逮捕することが許されているのです。

現行犯逮捕は警察官以外もできる?

盗撮で現行犯逮捕される場合、私服警官にマークされているケースもありえます。

例えば不審な行為をしていることから数人の私服警官にマークされていて、マークされている中、駅のエスカレーターを利用している中、女性のスカート内を盗撮しようとした場合などが典型例でしょう。このように、警察官が現行犯逮捕できるのは、当たり前のことで、特に疑問に思うことはないでしょう。

加えて、警察官以外の一般私人も現行犯逮捕をすることができると刑事訴訟法で定められています。たとえば、電車内で女性のスカート内を盗撮しているときに、同乗していた別の乗客に犯行が見つかってしまい、身柄の拘束を受けたとしましょう。これも現行犯逮捕として認められる行為ですので、「警察官じゃないから関係ないだろ」などという主張は通りません。

また、盗撮行為時に盗撮をしていた相手の女性に犯行が見つかってしまい、次の駅降車時に、駅員さんに身柄を拘束されたとしましょう。これも、私人による現行犯逮捕として、法律上認められている行為です。

盗撮現場から逃げ出しても現行犯逮捕される?

駅構内での盗撮行為を見咎められて、しかし、その場ですぐに逃げ出した場合であったとしても、場合によっては現行犯逮捕と同様の扱い、つまり、逮捕令状なしで現行犯逮捕されることがありえます。

盗撮行為を行ってから間もない状況で、次のいずれかに該当するような場合には、まさに犯行の最中に検挙された場合と同様に、犯人である可能性が高いため、現行犯逮捕されてしまいます。

  • 犯人として追いかけられているとき
  • 盗撮に使用したと思われる機器などを所持しているとき
  • 声をかけられて逃走したようなとき

このような場合に逮捕されることを、法律用語では準現行犯逮捕と呼びます。

現行犯逮捕は冤罪の可能性もある

このように、現行犯逮捕は「犯罪がまさに行われているとき」に、現認されることによって逮捕につながるものですが、同時に、盗撮事件の場合には、冤罪の可能性も多く含まれることになります。

盗撮案件の場合、迷惑防止条例違反もしくは軽犯罪法違反で逮捕されます。軽犯罪法違反の盗撮の場合は、基本的に公共の場所ではないところを盗撮する行為ですので冤罪の可能性はぐっと低くなります。

一方で、迷惑防止条例違反の盗撮案件の場合だと、公共の場所において「スマホなどを差し向けた」だけで逮捕されるものですので、場合によっては盗撮行為自体に及んでいないものも処罰される犯罪類型です。

このようなケースだと、例えば混雑している電車内においてスマホを操作しており、撮影するつもりなど全くないのに「今、盗撮しようとしていたでしょう?」という女性側の証言だけで逮捕にまで至る危険性が生まれます。

盗撮で後日、通常逮捕される場合

現行犯逮捕が大半を占める盗撮案件ですが、場合によっては後日に通常逮捕されるケースもありえます。

通常逮捕とは?

通常逮捕とは、逮捕令状を持参したうえで捜査機関が被疑者を逮捕するもので、憲法上でも、刑事法上でも、逮捕の基本となる逮捕手続です。被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、逮捕する必要があると認められた場合、裁判所は逮捕令状を発付します。

逮捕令状が発付される際には、すでに裁判所においてこのような判断がされていることになります。つまり、冤罪である可能性は、現行犯逮捕に比べて低くなります。

通常逮捕されるケース

盗撮事案において現行犯逮捕される事例とはどのようなものがあるのでしょうか?

まず考えられるのが、電車内で盗撮行為をしていたことが知られて現行犯逮捕されそうになったが、その現場から逃亡をしたようなケースです。最近はほとんどの方がスマホで撮影をすることができ、さまざまな動画をネット上にアップロードすることもできます。

そのような中でも、ニュースでも取り上げられることもしばしばあるように、盗撮や痴漢行為をした現場から、逃亡するために線路上に侵入し、走って現場から逃走するようなケースが一定数見られます。

その場から逃亡することができているので、現行犯逮捕・準現行犯逮捕されることはありえません。しかし、逃亡の様子がネットやテレビでも流れていることからも明らかなように、あちらこちらに監視カメラなどが設置されている社会状況から考えると、簡単に足がついてしまいます。

また、定期券の履歴なども当然照会されますので、盗撮現場から逃亡するだけでは、その場しのぎにしかなりません。被害女性やその場の証人の証言などが証拠とされ、逮捕令状が発付され。自宅などで通常逮捕されることになってしまいます。

次に想定されるケースは、女性トイレ等に盗撮用ビデオカメラを設置しているようなケースです。盗撮事案の中には、盗撮機器類を設置だけして犯人はその場におらず、後日タイミングをみて盗撮機器類を回収するというパターンの犯罪類型があります。

設置のタイミング、回収のタイミングで、女性トイレ内に侵入していることが見つかってしまったら、その場で現行犯逮捕されることになります。しかし、設置のタイミングで見つからず、撮影中の撮影機器が女性などに見つかってしまって通報をされたような場合だと、現行犯逮捕はありえません。

ビル内の監視カメラの映像等から盗撮機器類を設置した人間が割り出されて、犯人が見つかった場合、令状発付の上、通常逮捕されることになります。

現行犯逮捕と後日の通常逮捕に違いはあるのか?

現行犯逮捕と通常逮捕、それぞれどのようなものかを確認して参りましたが、これらはあくまでも逮捕手続の流れの違いに過ぎません。現行犯逮捕されたから刑罰が重くなる、通常逮捕されたから罪状が有利に働く。このようなことはほとんど関係ありません。

逃亡することにメリットはあるのか?

現行犯逮捕される際は、電車内や駅構内など、人が多くいる場所です。逮捕されるとなって混乱してしまう気持ちもありますし、その場から逃げきれさえすれば、社会的な不利益を被ることもありません。突発的に逃亡したいという衝動が芽生えてしまうのは、ある意味仕方のないことかもしれません。

しかし、先程も述べましたように、現場から逃走したとしても、多くのケースで通常逮捕されるのが目に見えています。更に問題なのが、現行犯逮捕されそうになった場面で逃亡したという行為が、情状面で不利に働く可能性があるということです。

盗撮事案の場合、初犯で反省をしており、示談がまとまっているのであれば、前科がつくことなく事件を終了させることができます。にもかかわらず、現場から逃亡してしまうと、捜査機関への印象も悪くなりますし、何より示談をまとめることが難しくなってしまいます。

結果的に不利に働く可能性が高い要素ですので、現場から逃亡することにメリットはあまりありません。

証拠を隠滅することにメリットはあるのか?

盗撮の場合、犯行を示す直接的な証拠は盗撮データです。これが犯行の決定的な証拠となるのは間違いありません。裏を返せば、盗撮の容疑で逮捕されたとしても、犯行を直接立証する証拠データがなければ問題ないのではないか、と考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、例えばスマホやPC内から盗撮データを消去したとしても、簡単に復元することができます。また、仮に特殊ソフトを使用して履歴を隠滅したとしても、そのような特殊機器を使用したという事実は残ってしまいます。また、盗撮した現場、盗撮用のカメラを設置するために女子トイレなどに忍び込んだ現場などが、映像などで残っていることも考えられます。

結果として、証拠を隠滅しようとした態度がマイナスな要素として捉えられるので、起訴判断や量刑判断の際に、不利に作用してしまう可能性もあります。

盗撮で逮捕されそうなときは弁護士に相談!

以上のように、盗撮現場で現行犯逮捕されるのか、後日、通常逮捕されるのかによって、罪状や刑罰に大きな差は生まれません。両者の差は、あくまでも逮捕に至るまでの手続上の違いでしかありません。

それよりも、現行犯逮捕の現場から逃亡して後日通常逮捕されることになったり、通常逮捕される前に証拠を隠滅したりするなどした場合には、身柄の拘束期間や判決の結果などに差が生まれる可能性がありました。

盗撮事件で、逮捕される可能性のある心当たりのある方は、まずは弁護士に相談することが重要です。法律の専門家であれば、現状どのようなことをすべきなのか、的確にアドバイスをすることができます。

弁護士に相談・依頼することによって、身柄の早期解放、不起訴の獲得など、多くのメリットを享受できる可能性が高くなります。できる限り早く、盗撮事件に強い弁護士に相談することをおすすめします。

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