勾留満期とは?勾留されて20日以上経過するとどうなる?
- 2024年7月16日
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この記事で分かること
逮捕と勾留の満期は23日間
刑事事件で逮捕された被疑者は、多くのケースにおいて、法律が定める期間、捜査機関に身柄を拘束されることになります。まず以下の通り、逮捕における手続き期限は48時間と定められ、その期限が到来する前に警察は事件に係る書類や証拠物と共に被疑者の身柄を検察に送致しなければなりません。
刑事訴訟法
第203条 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取ったときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から48時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。
続いて検察は、警察から送致を受けた被疑者に対する検事調べを行い、24時間以内に釈放するか、勾留請求を行う必要があります。
刑事訴訟法
第205条 検察官は、第203条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取った時から24時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
○2 前項の時間の制限は、被疑者が身体を拘束された時から72時間を超えることができない。
※上記の刑事訴訟法、いずれも抜粋
以上のように逮捕の期限は警察で48時間、検察で24時間の最長72時間(3日間)となります。そして検察の勾留請求が認められれば、刑事事件の手続き上では逮捕期間は終わり、被疑者は勾留という身柄拘束の期間に入るのです。
勾留の最長期間は一般的に20日間
刑事事件において、被疑者を起訴するための証拠を固め、起訴するか不起訴にするかという判断を、逮捕期間の72時間で決めることは難しいでしょう。被疑者の身柄を拘束しない在宅捜査の場合であれば、送検から起訴の決定まで数カ月を要することは珍しくなく、被疑者が逮捕された身柄事件では、検察にとって逮捕により拘束しておける時間は24時間しか認められていないのです。
当該事件の被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがなければ、被疑者を釈放して捜査を続けても良いと思われますが、被疑者の大部分は「逃げる気がある、証拠隠滅を図ろうとしている」と大部分の被疑者に対して検察は考えるようです。そのため検察は、捜査中に逮捕の期限が切れても引続き身柄の拘束をする、勾留行うために裁判所に対して勾留請求を行い、さらに長期間の取調べを行うのが通例です。
裁判所が認める勾留期間は10日間となり、それでもまだ捜査が必要だと検察が判断すれば再勾留請求を行い、裁判所に認められればさらに10日間の勾留が認められることになります。この勾留期間が終了する期日は一般的に勾留満期と呼ばれ、満期日までに検察の検事は被疑者を起訴するか、不起訴にするかの処分を決定するのです。
勾留再延長が認められる罪がある
たいていの刑事事件において、勾留期間は延長も含めて20日間となりますが、勾留再延長が認められている罪があり、刑事訴訟法にも定められています。
刑事訴訟法
第208条の2 裁判官は、刑法第二編第二章乃至第四章又は第八章の罪にあたる事件については、検察官の請求により、前条第二項の規定により延長された期間を更に延長することができる。この期間の延長は、通じて五日を超えることができない。
つまり、内乱に関する罪、外患に関する罪、国交に関する罪、および騒乱の罪に該当する犯罪については、さらに5日間の勾留延長が認められているのです。
勾留決定までの流れ
実際の勾留決定までの手続きの流れは、以下の通り刑事訴訟法に定められています。
刑事訴訟法
第60条 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一 被告人が定まった住居を有しないとき。
二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
第206条 検察官又は司法警察員がやむを得ない事情によって前三条の時間の制限に従うことができなかつたときは、検察官は、裁判官にその事由を疎明して、被疑者の勾留を請求することができる。
○2 前項の請求を受けた裁判官は、その遅延がやむを得ない事由に基く正当なものであると認める場合でなければ、勾留状を発することができない。
第208条 前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
○2 裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。
※以上、いずれも抜粋
裁判所に呼び出されて勾留質問を受ける
刑事事件の被疑者に関して検察から裁判所に勾留請求が行われると、裁判所はその請求が適正かどうかを審査しますが、身柄の拘束は憲法で保障された基本的人権に反するものとなるため、裁判所の判断が必要とする規定のために行われるものです。
審査においては、裁判所はまず被疑者を裁判所まで呼び出します。裁判官が被疑者の拘束されている留置場などの刑事施設まで出かけるわけではなく、被疑者が裁判所まで呼び出され、直接面談して検察から出された勾留請求を許可するかどうかが決められるのです。
勾留質問は裁判官によって裁判所で行われますが、裁判という形は取らず、被疑者が受けてきた警察や検察の取調べとあまり変わらないうえ、裁判官は逮捕に関する被疑事実を読み上げ、何か言いたいことはあるかと聞いてくるだけだと言われています。そこで被疑者が罪状を認めようが認めまいが、裁判官はただ話を聞くだけで、勾留質問は事務的に終了してしまいます。
勾留は短時間で決められる
警察での取調べ、検察での検事調べ、そして裁判官による勾留質問は、ほぼ同じ内容です。警察が捜査して集めた資料や証拠に基づいて被疑者に対する取調べが行われるわけですから、当然と言えばそれまでなのですが、裁判官による勾留質問が最もあっさりしていると言われています。
被疑者の身体の自由という権利が侵される勾留が、ほんの短時間で10日間の勾留が決定されてしまうのです。特に逮捕容疑の内容を否認、もしくは一部でも認めていない場合は、ほとんどの場合に勾留が決定されてしまい、勾留決定の書類が被疑者に交付されるのです。
最初から弁護士を呼べるような状態であれば良いのですが、多くのケースでは弁護士に相談する暇もなく、もしくは弁護士を呼ぶという想像もつかないまま3日間が過ぎてしまい、勾留が決められてしまうのです。
ここまで来てしまったら、本来ならば被疑者自身で弁護士を呼んで対応策のアドバイスを受けたいところですが、本人はどのような状態にあるかが分かりませんので、家族や友人・知人など、被疑者の力になりたいと考える人がいれば、弁護士に依頼して状況確認だけでもしてもらいましょう。そして最善策を練ってもらい、被疑者のために活動することが大切です。
不起訴が決定されれば刑事事件は終了
刑事事件の被疑者として逮捕され身柄を拘束されてしまうと、どんな罪を犯していようが、あるいは罪状を認めていても否認していても、ここまでの手続の内容はほとんど同じです。しかし勾留中に行われる検察の処分決定は、その内容によって被疑者の境遇に非常に大きな違いが生まれてきます。
まず検事が当該事件に関して、被疑者を不起訴とすれば、それで刑事事件の手続きは終了し、被疑者だった人は無罪と判断され釈放されます。警察の捜査記録は残りますが、前科はつきませんので、逮捕されてしまった人にとっては最も理想的な刑事事件の終わらせ方だと言えるでしょう。
そのため、刑事事件に巻き込まれてしまった場合に、弁護士と一緒に目指す目標は不起訴処分となるのです。
勾留満期で釈放されると?
しかし勾留満期に不起訴で釈放されても、逮捕する時は覆面パトカーや、遠隔地なら飛行機まで使って連行されてきたものが、その後居所まで送ってもらえるサービスはありません。もし起訴されて無罪判決を勝ち取った場合には、賠償請求をして勾留期間中、1日あたり1万円以上の補償金を請求して受け取ることが可能ですが、起訴前の勾留は補償の対象にはなっていないのです。
逮捕や勾留期間中に被った社会的な損害は誰も補償してくれないことに留意しておきましょう。最長で23日間も会社を休んだとなれば、たとえ冤罪であったとしても元の生活にスムーズに戻ることは難しいと考えられます。
そのため、さまざまな対策を講じてくれ、社会復帰のアドバイスをくれる弁護士に相談しておくことをお勧めします。経験豊富な弁護士なら、早期の社会復帰に向けた方策を熟知していることでしょう。
「処分保留」とは?
勾留満期日に釈放されるパターンとして、もうひとつ「処分保留」があります。
これは逮捕や勾留期間中に検事が処分を決め切れなかったケースで、処分保留になるのは、警察や検察の心証は有罪なのですが、起訴しても裁判で必ず勝てると確信できる証拠や自白が得られなかったような事件の場合に取られるものです。
裁判で勝てるだけの証拠が集まらなかったといっても、いつまでも身柄を拘束しておくことは法律で禁止されているため、ひとつの事件(逮捕状)で、被疑者の拘束期限を過ぎたら、起訴をしない限り被疑者は釈放しなければならないのです。
しかし一方で、処分保留の場合は警察が引続き事件の捜査を行い、有罪を立証できる証拠が揃えば、後日起訴される可能性が残ってしまいます。
不起訴処分で釈放された場合でも、何かのはずみで裁判において有罪にできる証拠が出てくれば起訴される可能性はゼロではありませんが、不起訴処分や処分保留で釈放されれば、とりあえず刑事手続きは終了しますので、刑事事件に巻き込まれた場合の結末としては、良い終わり方だと言えるでしょう。
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