判決言い渡しとは?裁判官が判決を言い渡すまでの流れ

判決

刑事裁判の最終手続き~判決手続き

刑事裁判の終盤は、検察官による論告求刑に始まり、弁護人の最終弁論、被告人の最終陳述で弁論は終結し結審を迎えます。公判はいよいよ判決が言い渡される判決手続きへと移り、被告人が有罪か無罪か、有罪の場合はどれほどの刑罰が科されるのかが決まります。

本項では、たった1日で、なおかつ短時間で終了してしまう判決公判について説明していきます。

すべての審理が終了し、判決公判へ

検察官による論告求刑、弁護人による最終弁論、被告人による最終陳述が終了すると裁判官は、「以上でこの裁判は結審となります」と、お互いの主張が出尽くし、弁論も終わり、裁判の審理がすべて全て終了したことを宣言します。通常の裁判はどんな単純で明快な事件でも、ここで一旦キリを付け、判決は別の日に言い渡されることになります。

軽微で単純な事件で、被告人が検察の言い分を全面的に認めているケースだと、最初の人定質問から、最後の最終陳述まで1回の公判期日で終わってしまうことが珍しくありませんが、そのような事件の裁判であっても、裁判官は公判で提出された証拠を慎重に検討して審理を行い、判決文を書かなければなりませんので、判決公判は日を改めて行うことになっています。

判決公判は、結審後1~2週間で行われる

刑事裁判の場合、公判から次回の公判までの期間は裁判所によって差があると言われていますが、基本的に公判のスケジュールは、弁護人を務める弁護士の都合に合わせて組まれます。毎回公判期日の最後に、裁判官が次回の公判日程を提案し、検察官や弁護人が提案された日時で問題なければ、次回の公判日が決定するという流れです。

つまり、裁判所が提案した次回の公判日に都合が悪ければ、弁護側は日程変更を要求できるのですが、こうした日程調整が慣習になっているのは、当事者の中で弁護士が一番忙しいからだとも言われています。

中にはこうした慣習を逆手にとって、被害者との示談交渉が滞っている場合など、次回の公判日を先延ばしにするという法廷テクニックも存在するようです。とはいえ、公判日は1カ月程度の間隔で行われるのが一般的で、2カ月も空くのは年末年始や年度末、あるいは盆休みの時期に掛かった場合に限られます。

ただし、判決公判の場合は事件が単純で軽微なケースだと結審して1~2週間後になることがほとんどだと言われています。これは裁判所が効率を重視してのことで、被告人が最初から検察側の主張を全面的に認めていて、弁護側が検察側との重大な争点がない場合、最短のスケジュールで判決公判が開かれると考えられます。

一方、やはり重大な事件や、無罪か有罪かを争うような裁判では、1~2カ月はかかると思って良いかもしれません。いずれにしろ、裁判所の判断で判決公判の日程は提示され、弁護側と検察側双方の合意で決定されます。

即決裁判制度では1回の公判期日で判決も下される

一般的な裁判では判決公判は必ず結審後の別の日に設けられるのですが、即決裁判制度という1回の公判で判決まで言い渡す特殊な裁判制度があります。即決裁判では最初の公判において、人定質問から最後の被告人の最終陳述まで一気に進められ、裁判官はいったん退廷し別室で5~10分ほど審理した後、法廷に戻り即座に判決を下すというものです。

即決裁判が可能となるのは、まず単純な事件であること、予想される刑罰が軽微であること、加えて起訴された罪に対して下される刑罰が、死刑、無期懲役、懲役または禁固1年を超えるものではないということも条件となっています。

そして被告人が有罪を認めていて、刑罰の軽重だけを決める量刑裁判に限って即決裁判が行われ、被告人本人が即決裁判で裁かれることに同意している場合に即決裁判が行われます。

現実の判決言い渡しは短時間で終了

刑事裁判の判決言い渡しといえば、起訴された被告人の運命が決定する瞬間です。映画やドラマではさまざまな演出が行われ、ストーリーのクライマックスを盛り上げますが、現実の裁判の判決公判は、実にあっさりとしています。

法廷に集まる関係者は、他の公判と同じように検察官、そして弁護人と被告人がいて、法廷が開放されると傍聴人も入廷し、開廷時間ちょうどに裁判官が入廷してくるのも、通常の公判と変わりはありません。重大事件で社会の注目を集めている事件でない限り、判決公判で行われる手続きは被告人に判決文を言い渡すことだけになりますので、公判の冒頭から被告人は証言台に呼ばれます。

ここまでの公判中にずっと顔を突き合わせているので、いまさらだとは思いますが、裁判官は被告人の名前と生年月日、住所や本籍などを尋ねる人定質問を再び行い、被告人が間違いなく判決を言い渡すべき本人であることを確認します。そして映画やドラマとは違い、たいした溜めもなく判決文の読み上げを始めます。

判決文読み上げの流れ

判決文は、主文と判決理由に分かれます。

主文とはニュースなどでもよく聞かれるように、「被告人を○○の刑に処する」という刑罰の言い渡しです。

一般的な事件では、主文の告知が終わると、裁判官は判決理由を読み上げることになりますが、その前に裁判官は被告人に向かって、「長くなるので、座ってください」と証言台に用意されている椅子に着席して聞くように促すのが普通です。ここで椅子に座るか、そのまま立って聞くかは被告人の自由ですが、たいてい被告人は着席して判決理由を聞くようです。

判決理由は、「被告人が起訴された犯罪」、つまり罪となるべき事実を説明し、「どのような法律が適用」されたのか、そして「量刑を科す理由」から成ります。

これら被告人の罪を追及する内容の後は、「事件後に被害者との示談を成立させた」、「今では十分反省している」など、情状酌量の余地があり、量刑などに適用されているならば、それを説明し、最終的に主文で述べた刑罰に決まったことを明らかにします。

但し、死刑や無期懲役の判決が下るような重大な犯罪の判決言い渡しは、主文が後になるとされています。その理由は、主文を先に述べてしまうと、そのショックが大きく、判決理由が被告人の耳に届かない可能性があるため、とされています。

また、主文言い渡しの際、裁判長が「被告人は…、」で始まると無罪、「被告人を…、」で始まると「○○の刑に処する」と有罪と考えられるため、気の早い報道関係者は、「は」と「を」の声が発された瞬間に速報を出す、とも言われています。

判決公判の所要時間

判決文は「主文」と「判決理由」に分かれていますが、通常の裁判でそれを読み上げる時間は5分とかかりません。社会的なニュースになるような重大事件であれば、それなりに「判決理由」の言い渡しに時間がかかる場合もありますが、多くの裁判の判決公判はあっさりと終わってしまいます。

実際に東京地方裁判所の公判スケジュールを見ると、判決公判の所要時間は10分で予定されており、判決公判ばかりの法廷では、30分の間に3つの判決公判が組み込まれていることもあるようです。判決公判においては、裁判官以外は誰も発言する事はありません。また裁判官は、被告人を証言台に立たせて判決文を読み上げると、上訴の告知をして、すぐに退廷します。

しかし刑事裁判の場合、裁判官によっては、判決文には書かれていない内容を話すことがありますが、これは説諭と呼ばれるもので、法律的には訓戒と言います。「情状証人に立ってくれたお母さんの期待を裏切らないよう、二度と罪を犯さないようにしてください」というような、堅苦しい判決文とは違った言葉で被告人を戒めるのです。

もっとも説諭は必ず行われるわけではなく、好んで話す裁判官もいれば、まったく説諭を述べない裁判官もいます。その説諭の時間を含めても、やはり一般的な事件の判決公判は10分程度で終わってしまいます。

判決は14日後に確定する

公判期日で言い渡された判決は、14日後に確定します。弁護側と検察側に、判決対する異存がなければ、何も手続きをすることなく裁判は終了ですが、いずれか、または双方が判決に不服がある場合は、まだ裁判は継続する可能性があります。

言い渡された判決内容に不服がある場合には、弁護側でも検察側でも、14日後の上訴期限までに上訴の手続きを行い、裁判所が認めれば控訴審を受けることができます。また改めて裁判を戦うことは、被告人の精神的にも経済的にも厳しいことになりますので、その点を十分に勘案し、判決を受けて上訴するかどうかは、弁護人と相談の上で対応を決めることをお勧めします。

もちろん、身に覚えのない罪状で起訴され裁判となり、有罪判決を下されてしまった場合には、身の潔白を証明するために、上訴して改めて戦うべきでしょう。ここで弁護人となる弁護士を替えても何の問題もありませんので、控訴審を戦ったことのある、経験豊富な弁護士を探してみましょう。

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