情状証人とは?質問内容は?何を発言すればよいか?

両親

情状証人は、非常に重要な意味を持つ

刑事事件の裁判において、経験豊富で有能な弁護士を選任することを除けば、被告人の家族や友人・知人、あるいは会社の関係者ができることは限られますが、情状証人になり証言をするという非常に大きな意味を持つものがあります。

被告人の味方として公判の傍聴に毎回赴くということも重要ですが、被告人の将来を左右する判決を下す裁判官に対して直接的な働きかけができる役割も担うことができるため、弁護人からの依頼があり、被告人の将来を案じる気持ちがあるのであれば、心を決めて法廷において情状証人として証言することをお勧めします。

情状証人とは?

刑事裁判の公判期日において、法廷で証言をする証人の多くは、事件に直接関係する被害者本人や事件の目撃者、あるいは被告人を取り調べた警察官などです。これらの証人は単に証人と呼ばれますが、日本の刑事裁判ではその他に情状証人と呼ばれる証人がよく出廷して証言を行います。

情状証人は通常、弁護側が召喚する証人で、被告人のアリバイなど事件に直接関係のある証言をするわけではなく、被告人の良い人間性を主張するなど、被告人の罪を少しでも軽くしてもらうために証言する証人です。

多くの場合、情状証人が証言を行うケースは、被告人が最初から罪を認めている量刑裁判になり、日本の刑事裁判のほとんどが量刑裁判であることから、必然的に公判の傍聴に行けば、法廷で情状証人の証言を見る機会は多いでしょう。

情状証人として証言するのはどんな人?

情状証人は被告人を擁護する証人となりますので、一般的には被告人の家族が選ばれることが多く、被告人の夫や妻、あるいは父親や母親などの近親者が情状証人となるケースがほとんどです。

情状証人が家族であった場合、弁護人の質問に答える形で、「被告人が幼い頃から優しく真面目な性格」、「今回起こした事件は魔が差しただけ」、「もう二度と同じ犯罪に手を染めることはない」といった内容を主張することが一般的です。

また、近親者以外の人が情状証人になるケースでは、被告人が勤めていた会社の上司ということもあります。

たいていの場合、刑事事件の被告人になってしまった人は、起訴されて被告人となる以前に、警察に逮捕されて勾留された時点で職を失ってしまうことが多いのですが、少ないケースではありますが、絆が深かった勤め先の社長などが「罪を償った後は再び自分の会社で雇う」と訴えることもあるようです。

情状証人に対する検察の質問

情状証人は事件と関わりがないのですが、普通の証人と同様に反対尋問が行われます。通常、情状証人を法廷に召喚するのは弁護側になり、弁護人は情状証人に対する質問を通して、被告人の良好な人間性を裁判官に主張します。

情状証人に限らず、裁判で証言をする証人は、「こんな質問をするので、こう答えてください」というように、呼び出した弁護人や検察官と事前に想定問答などの打ち合わせを綿密に行います。

そのため、最初の証人への質問は、証人自身が緊張し過ぎて答えを忘れてしまわない限りスムーズに進むのですが、情状証人に対しても通常ならば検察側からの反対尋問が行われます。

事前の打ち合わせやシミュレーションで、相手側が投げかけてくる反対尋問に対する模範的な回答の準備はしていますが、実際にどのような質問をされるのかは、本番になってみないとわかりません。

弁護人と綿密な対応策を練る

情状証人に対する反対尋問は、たいていのケースでは被告人の隠しておきたい秘密、たとえば前にも同じような犯罪で捕まった前科があるといったことを蒸し返してきます。

情状証人に向かって検察官は、「被告人に対して、再び罪を犯さないように注意すると仰いましたが、被告人は過去にも同じ罪を犯しています。そんな被告人に対して、どう再犯をしないように注意するのですか?」などと情状証人を追い詰めるのです。

このような検察側の指摘をどうかわして反論するかは、弁護人との入念な打ち合わせが必要になり、そこまで考えて対応してくれるのが有能な弁護士であると言えるでしょう。

証人の保護について

刑事裁判においては、通常の証人も、情状証人も、第三者からの圧力から守るための制度が整えられています。裁判は公開で行われることが原則であるため、被害者は被告人からの圧力、情状証人は被害者や傍聴人からの報復行為などを恐れて、十分に証言ができない可能性があります。

また検察官、被告人、弁護人が証人を請求する場合には、相手方に証人の氏名や住所を知る機会を与えなければなりませんから、プライバシー保護の観点から問題が生じることも考えられます。そのため、2016年(平成28)年の刑事訴訟法改正により、証人の氏名や住所に関する情報を保護する措置が新設されています。

ただ人前に出て証言をするのが嫌だという理由だけでは認められる可能性は低いのですが、事件の内容や被害者、被告人との関係性を鑑みて、不安があるならば弁護人に相談のうえ、情状証人を引き受けることをお勧めします。

情状証人に対する裁判官の質問

反対尋問が行われた後、裁判官が証人に質問することは珍しくなく、特に情状証人に対しては、ほぼ必ずと言っていいほど、裁判官が自ら質問をします。

最も多い質問内容は、「この裁判が終わった後、被告人の社会復帰のために何か具体的なプランはありますか?」といったものです。

情状証人がよく登場する量刑裁判の場合、最初から被告人が罪を認めているのですから、有罪か無罪かということは争点にはならず、裁判官が心配するのは判決を下した後の、被告人の社会復帰方法です。

被告人の行く末を心配する想い、再犯を懸念する気持ちなど、裁判官の真意は明らかではありませんが、どのように被告人が社会復帰をするかということを情状証人に質問することが多いようです。

この質問に対して、被告人が社会人だった場合には、勤めていた会社への復職のメドが立っている、再就職先の見込みがあるなど、社会復帰の道筋が明確であれば、再犯でも早期の社会復帰が見込めるものとみなされ、執行猶予がつく可能性が高まる場合があります。

但し再犯であった場合には、執行猶予付きの判決を得ることは難しく、いかにして刑期を短くするかが焦点となってきます。

情状証人の役割と責任

情状証人は公判での証言において、被告人の人間性の良さや社会復帰の道筋などを示し、裁判官に対して刑罰が軽くなるように主張を行います。

そして希望通り、狙い通り執行猶予付きの判決を得たり、短めの刑期になったりすれば、情状証人の役割を果たしたことになります。しかし、実際に社会復帰した元被告人に対して、その後の生活にまで責任を負う法的な必要性はありません。

いくら証言において、「まっとうな社会生活を送るように指導監督します」と言ったからといって、もし元被告人が再び罪を犯してしまったとしても、監督不行き届きなどと処罰を受けることはありません。

被告人をかばいたいがために嘘の証言をした場合には、偽証罪に問われる可能性がありますが、被告人を信じて真実を語った証言であれば、その後の責任を問われることはありません。

情状証人として証言する際の注意事項

情状証人は公判において、被告人が社会に復帰した場合は二度と罪を犯さないように指導監督を続ける旨を発言するのですから、その証人自体が信頼に値する人と思わせなければなりません。

服装だけで人柄が判断できるとは思いませんが、裁判官に好印象を持ってもらうために、男性ならばスーツを着用し、女性ならば質素な服装を選び過度なアクセサリーはしないなど、公的な場にふさわしいと考えられる身なりで出廷することをお勧めします。

また法廷での立ち居振る舞いや、言動について弁護人にしっかりとアドバイスを受けるようにしましょう。

証人尋問は判決を左右する

情状証人を含め、証人尋問は判決を左右する重要な証拠調べになります。一般的に、裁判は真実を明らかにする場と認識されていますが、必ずしも真実のみを追究する場ではないのが実情です。

裁判とは、検察側と弁護側が、それぞれが描いたシナリオで「どのように裁判官を納得させるか」を争うディベートという側面もあると言えます。自らが描いたシナリオが真実であり、その通りに納得させ勝訴できればいいのですが、実際の裁判では、裁判官にとって受け入れやすいシナリオであることも重要になるのです。

証拠調べは裁判のハイライトであり、証人尋問は特に裁判官の判決を決めるうえで大切な手続きとなり、被告人の味方となる弁護人の手腕が最も発揮される場面です。

無罪判決、軽い刑罰、執行猶予の獲得など、少しでも弁護側が目指す判決を得るためには、腕の良い弁護士の力を借りて裁判に臨むことが必須だと言えるでしょう。

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