極刑とは?日本の刑罰で生命刑と呼ばれるものは死刑のみ

死刑

日本の刑罰の中で、生命刑は「死刑」のみです。重大な事件を起こしてしまった被告人に「死刑」の判決が下されるのですが、国際的には「死刑」を廃止する、あるいは執行を停止する動きが強まっています。日本でも、制度の見直しや改革が求められる時期です。

生命刑は「死刑」のみ

刑事事件において、罪を犯した人が受ける刑罰は、生命刑、自由刑、財産刑の3つに分類されます。

生命刑とは罪を犯した人の命を奪うもの、自由刑とは同じく自由を奪って拘束するもの、財産刑とは罰金刑などで金銭を奪うものです。

よって、生命刑は「死刑」のみとなります。

一方、海外には身体刑と名誉刑がある国もあります。

身体刑とは、具体的にはムチ打ち刑のように、犯罪者の身体に苦痛を与える刑で、近代以前は一般的な刑でしたが、国際的には近代以降に自由刑が普及し、拷問等禁止条約を始め虐待を避ける動きが広まってきた歴史があるために、採用している国は減っています。

しかし身体刑は、現在でもシンガポールやマレーシア、あるいは一部のイスラム国家では行われていて、その方法は鞭打ちなどで罪人の身体を傷付けるものです。

日本では明治維新の時、欧米諸国に倣って近代司法を取り入れたことから身体刑はなくなりました。

名誉刑とは、罪を犯した者から名誉に関わる権利や社会的な地位を奪うことですが、現在ではほとんど姿を消していると言われています。

「死刑」の法律上の定めについて

生命刑は一般的にも「死刑」のことを指し、生命刑として法律で定められているのも「死刑」だけで、他の刑罰はありません。

刑法では、第9条に刑の種類が定義されています。

刑法

(刑の種類)
第九条 死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。
加えて、日本における「死刑」の執行方法は、絞首で行うと刑法第11条で定められています。

(死刑)
第十一条 死刑は、刑事施設内において、絞首して執行する。
2 死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで刑事施設に拘置する。

日本の刑法において「死刑」の執行方法が絞首と定められたのは、100年以上前の昔の話です。

当時はまだ考案されていなかった薬物注入など、死刑囚に苦痛を与えない執行方法に比べて、かなり残酷な方法が未だに残っているのです。

絞首が楽だという見方もありますが、誰にも分かりません。

世界の「死刑」執行方法

近年の世界的な考え方では、死刑囚に苦しみを与えない方法を採るべきだとする見解が主眼となっています。

しかし日本と同じく現在も「死刑」執行があるアメリカの場合は、州によって法律は違いますが、薬物注入による薬殺を始め、電気椅子やガス殺、あるいは銃殺など複数の方法があります。

これらの方法は苦しみを与えないという方向性からは外れていて、過去の法律が未だに残されているに過ぎないと考えられます。

「死刑」の存続や廃止議論も進めるべきですが、執行方法についても考え直されるべきでしょう。

「死刑」が刑罰となる犯罪は?

日本の刑法において、刑罰として「死刑」になるのは、内乱(第77条)、外患誘致(81条)、外患援助(82条)、現住建造物等放火(108条)、激発物破裂(117条)、現住建造物等浸害(119条)、汽車転覆等及び同致死(126条)、往来危険による汽車転覆(127条)、水道毒物等混入及び同致死(146条)、殺人(199条)、強盗致致死傷(240条)、強盗・強制性行等及び同致死(241条)の12種類です。

これらの罪のほとんどは、「死刑または無期懲役に処する」などと規定していて、「死刑」以外の刑罰となることはありますが、唯一、外患誘致(81条)だけは、「死刑に処する」と定められていて、有罪となれば必ず「死刑」の刑罰が科されます。

刑法
(外患誘致)

第八十一条 外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。

外患誘致とは、条文の通り、外国と通じて日本に対して武力攻撃を行った罪です。

18歳未満の者は「死刑」判決を受けない

一方、少年法第51条に定められているように、被告人が18歳未満の場合は、「死刑」の刑罰を受けることはありません。

少年法

(死刑と無期刑の緩和)
第五十一条 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、死刑をもつて処断すべきときは、無期刑を科する。
2 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、無期刑をもつて処断すべきときであっても、有期の懲役又は禁錮を科することができる。この場合において、その刑は、十年以上二十年以下において言い渡す。

たびたび少年法が壁となり、18歳未満の者による残虐な行為が「極刑」に処せられないと社会問題になることがあります。

しかしながら世界的には「死刑」廃止の風潮にあり、合わせて考えるべきものだと思われます。

「死刑」は裁判員制度の裁判で科せられることも

一般市民が刑事事件の裁判において、裁判員として裁判の審理に参加する裁判員制度において、以下のように取り扱われる事件が定められています。

裁判員の参加する刑事裁判に関する法律

第二条 地方裁判所は、次に掲げる事件については、次条又は第三条の二の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、裁判所法第二十六条の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。

一 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件

二 裁判所法第二十六条第二項第二号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)

同法律で規定されているように、裁判員制度が適用される事件は、地方裁判所で行われる刑事裁判のうち殺人、傷害致死、強盗致死傷、現住建造物等放火、身代金目的誘拐などの犯罪で、一定の重大な犯罪となります。

この場合は、当然ながら判決により「死刑」が科せられる場合もあるのです。

一般市民には縁がないと思われがちな「死刑」ですが、自身が罪を犯した場合だけではなく、裁く側として関わる可能性があることを意識し、「死刑」制度について考え直してみることも必要ではないでしょうか。

「死刑」判決を受けた死刑囚の状況

一般的にはあまり知られていませんが、裁判で「死刑」が確定した人、いわゆる死刑囚は刑務所にはいません。

上記の刑法第11条の2に定められているように、死刑囚は全国の刑事施設に収容されており、この場合の刑事施設とは、刑務所ではなく拘置所となります。

刑務所は自由刑である懲役や禁錮の執行を行う施設となるので、刑の執行をまだ受けていない未決囚を収容する場所ではありません。

死刑囚にとっての刑の執行は「死刑」に処される瞬間であり、それまでは刑の執行を受けていない未決囚として扱われます。

そのため、「死刑」の執行を行う刑場も拘置所に備えられています(下記、札幌と仙台はそれぞれの刑務所で行われる)。

2017年現在、死刑囚が収容されている日本の拘置所は、札幌拘置支所、仙台拘置支所、東京拘置所、名古屋拘置所、大阪拘置所、広島拘置所、福岡拘置所の7ヶ所で、死刑囚はこれらの拘置所のいずれかにいることになります。

「死刑」が執行されるまで

「死刑」判決を受けた死刑囚は、前述の通り拘置所に収容されます。

そして「死刑」の執行を待つことになりますが、この期間は刑の執行ではなく、あくまでも絞首による刑が執行されるまで特別な拘禁状態に置かれているものであり、決して受刑者として拘置所にいるわけではありません。

外部交通と呼ばれる、死刑囚の外部とのやり取りは、信書の発信と面会に限られます。

しかし面会できる相手は、親族・婚姻関係の調整や訴訟の遂行などの処理のために面会することが必要な者(たいていの場合は弁護士)や、面会により死刑囚の心情の安定に資すると認められる者(家族、親族、親しい友人など)などに限られ、家族と疎遠になっていた場合にはその家族とも面会できない場合があります。

反面、死刑囚には懲役刑とは違い刑務作業をする必要がなく、希望すれば軽作業は可能とされていますが、基本的にはスケジュールに則った規則正しい生活を送っています。

そして、日本において「死刑」執行の最終判断を下すのは法務大臣です。

刑事訴訟法

第四百七十五条 死刑の執行は、法務大臣の命令による。

○2 前項の命令は、判決確定の日から六箇月以内にこれをしなければならない。但し、上訴権回復若しくは再審の請求、非常上告又は恩赦の出願若しくは申出がされその手続が終了するまでの期間及び共同被告人であつた者に対する判決が確定するまでの期間は、これをその期間に算入しない。

第四百七十六条 法務大臣が死刑の執行を命じたときは、五日以内にその執行をしなければならない。

上記の刑事訴訟法にも定められているように、再審請求中の「死刑」執行は原則としてないはずですが、2107年7月に再審請求中の死刑囚の「死刑」執行が行われ、大きな問題となりました。

「死刑」確定後に、再審で無罪となった例が過去に4件もありますので、「死刑」の存続・廃止問題が叫ばれている中でもありますので、重視すべき問題だといえます。

日本の死刑囚は130人弱

現在、検察の資料などによると、全国の刑事施設に収容されている死刑囚は130人弱です。

ここ数年の「死刑」執行今年を見てみると、2012年は7人、13年は8人でしたが、14年から16年は年間3人の執行にとどまり、17年は11月の段階で2人となっています。

確定「死刑」判決は、2012年に10人、13年に8人、14年に7人、15年に2人、16年には7人となっていますから、次第に死刑囚の数は増えていることになり、実際には戦後最高水準の数となっています。

死刑囚として長期にわたり拘置所生活を続け、高齢や病気のために命を落とす人もいます。

判決を受けてから「死刑」の執行まではかなりの期間を要するため、このような事態が起こるのですが、あまりにも早々に執行してしまうと冤罪であった場合に社会問題となる可能性が大きく、かといって被害者感情から見れば引き延ばしてばかりいると何のために厳しい裁判を戦ってきたのか分からなくなります。

先に述べたように、基本的には再審請求中は「死刑」の執行は行われないとされていますから、万が一、家族や友人・知人が「死刑」に相当するような罪を犯してしまい、どうしても助けてあげたいと考えるならば、有能な弁護士に依頼し、執行回避のための策を進めてもらうべきでしょう。

もちろん、冤罪であると信じるならば、弁護士と力を合わせて徹底的に戦うべきです。

世界的に「死刑」は廃止の方向に向かっている

世界的に、「死刑廃止」への動きが強まっています。

現在、世界の約3分の2以上の国が「死刑」制度を廃止したか、あるいは長年に渡って「死刑」の執行を行っていない国です。

特にヨーロッパやアメリカ大陸では制度廃止の動きが強く、先進国OECD加盟国で「死刑」が残されているのは、日本とアメリカの一部の州、および韓国だけです。

その韓国でも、「死刑」執行は20年近く停止していると言われていますので、実質的に国家として「死刑」制度を維持し、執行しているのは日本だけなのです。

日弁連(日本弁護士連合会)は昨年10月、2020年までに「死刑」制度の廃止を目指す宣言「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択しています。

「死刑」で本当に罪は償えるのか

刑事事件の、それも「死刑」の刑罰が科せられる重大な事件の被害者にも人権があり、死をもって償うことを望む人もいるでしょう。

しかし、現在の「死刑」制度には多くの問題があることは事実です。

「死刑」は本当の意味で罪を償うことになるのかどうかの議論もあります。

日弁連の宣言にもある通り、弁護士には「死刑」制度廃止派の人が多くいます。

「死刑」が求刑される可能性がある重大な犯罪の弁護は、損得抜きで弁護を申し出る弁護士も少なくないと言われています。

万が一自分や家族、あるいは友人・知人が重大事件の加害者になってしまった場合は、弁護士の力を借りて、刑事事件の手続きを進めることが大切です。

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