死刑になる罪はどのようなものがある?日本の刑法上では12種類
- 2024年7月2日
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「死刑」は刑罰の中で最も重く、「極刑」や「処刑」とも呼ばれます。有罪となった際に「死刑」判決が下される罪は少なく、実際の件数もそんなに多くありませんが、ニュースになることが多く目立ってしまいます。また、冤罪は絶対に避けなければなりません。
日本で最も重い刑罰である「死刑」
「死刑」は生命刑とも呼ばれ、刑法第9条に刑罰として規定され、第11条に執行方法が定められています。
第九条 死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。
(死刑)
第十一条 死刑は、刑事施設内において、絞首して執行する。
2 死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで刑事施設に拘置する。
日本の刑法において「死刑」の執行方法が絞首と定められたのは、100年以上昔の話で、当時はまだ考案されていなかった薬物注入など、死刑囚に苦痛を与えない方法に比べて、かなり残酷な方法が未だに残っています。
受刑者の身体に傷をつける身体刑が残酷だということで、現在の日本では規定がありませんが、その身体刑の延長線上にある「死刑」が実際に執行されているのは問題であると、「死刑」に関しては制度の存廃問題が常に議論されています。
「死刑」が執行されるまで
「死刑」判決を受けた死刑囚は、上記刑法第11条に基づき、刑事施設(拘置所)に収容されます。
そして、日本において「死刑」執行の最終判断を下すのは、刑事訴訟法第475条に定められているように、法務大臣となります。
刑事訴訟法
第四百七十五条 死刑の執行は、法務大臣の命令による。
○2 前項の命令は、判決確定の日から六箇月以内にこれをしなければならない。但し、上訴権回復若しくは再審の請求、非常上告又は恩赦の出願若しくは申出がされその手続が終了するまでの期間及び共同被告人であつた者に対する判決が確定するまでの期間は、これをその期間に算入しない。
第四百七十六条 法務大臣が死刑の執行を命じたときは、五日以内にその執行をしなければならない。
この第475条に定められているように、再審請求中の「死刑」執行は原則としてないはずですが、2107年7月に再審請求中の死刑囚の「死刑」執行が行われ、大きな問題となりました。
「死刑」確定後に、再審で無罪となった例が過去に4件もありますので、「死刑」の存続・廃止問題が叫ばれている中でもあり、重視すべき問題だと言えます。
日本の死刑囚は130人弱
現在、検察の資料などによると、全国の刑事施設に収容されている死刑囚は130人弱です。
ここ数年の「死刑」執行今年を見てみると、2012年は7人、13年は8人でしたが、14年から16年は年間3人の執行にとどまり、17年は11月の段階で2人となっています。
確定「死刑」判決は、2012年に10人、13年に8人、14年に7人、15年に2人、16年には7人となっていますから、次第に死刑囚の数は増えていることになり、実際には戦後最高水準の数となっています。
先に述べたように、基本的には再審請求中は「死刑」の執行は行われないとされていますから、万が一、家族や友人・知人が「死刑」に相当するような罪を犯してしまい、どうしても助けてあげたいと考えるならば、有能な弁護士に依頼し、執行回避のための策を進めてもらうべきでしょう。
もちろん、冤罪であると信じるならば、弁護士と力を合わせて徹底的に戦うべきです。
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「死刑」が宣告される罪は少ない
裁判で有罪が確定した場合に「死刑」が宣告されるのは、当然ながら法律の条文の中で「死刑」が刑罰に含まれている場合だけです。
新聞やテレビ、あるいはネットニュースでは、毎日世界中で起こった犯罪の報道がされていて、その犯罪の凶悪さに「死刑にすべきだ!」という感情が沸き起こることがよくありますが、実際に「死刑」になる罪は非常に限定的です。
報道されるような事件は、刑罰に「死刑」が含まれるような重罪が多いので、どうしても目立ってしまうのでしょう。
刑法で「死刑」が規定されているのは12種類
日本の刑法において、刑罰として「死刑」が規定されているのは、以下の12種類になります。
- 内乱(第77条)
- 外患誘致(81条)
- 外患援助(82条)
- 現住建造物等放火(108条)
- 激発物破裂(117条)
- 現住建造物等浸害(119条)
- 汽車転覆等及び同致死(126条)
- 往来危険による汽車転覆(127条)
- 水道毒物等混入及び同致死(146条)
- 殺人(199条)
- 強盗致致死傷(240条)
- 強盗
- 強制性行等及び同致死(241条)
刑法において刑罰で「死刑」が含まれている犯罪はこれだけですので、上記以外の犯罪ではどんなに凶悪な事件であっても、検察は裁判で「死刑」を求刑できません。
次に、個別の条文をひも解いてみましょう。
反乱やテロ行為に「死刑」が規定されている
一般的に、国家に対しての罪や、社会を不安に陥れる行為には重い刑罰が科されます。
「内乱」や「外患」というのは、国家の転覆を図って武装蜂起をした場合などに適用されるもので、「内乱罪」は文字通り自分たちで内乱を起こした場合で、首謀者は「死刑」が求刑される可能性があります。
一方、「外患誘致」や「外患援助」といった「外患罪」は一般的には聞き慣れない言葉ですが、外国が日本を侵略するように手引きした罪(外患誘致罪)や、外国に手を貸して侵略しやすくする罪(外患援助罪)のことを指します。
そして、「外患誘致罪」は、有罪となった場合の刑罰が「死刑」しかない唯一の犯罪です。
つまり、「外患誘致罪」で起訴されて有罪が確定すると、申し渡される刑罰は確実に「死刑」となります。
現行法になってから、実際に「外患誘致罪」で訴えられた人は実在せず、「死刑」判決を受けた例はまだありませんが、「外患誘致罪」は刑法の中で最も重い罪だと言われています。
社会不安を起こす犯罪に「死刑」が定められている
一方、「水道毒物等混入及び同致死」、「汽車転覆等及び同致死」、「往来危険による汽車転覆」、「激発物破裂」、そして「現住建造物等浸害」は、いわゆるテロ行為に該当し、社会不安を巻き起こす犯罪です。
「水道毒物等混入及び同致死罪」は、水道の浄水場や水源に毒物を混入させるような行為で、無差別テロとなるため、「死刑」の刑罰を受ける可能性があります。
「汽車転覆等及び同致死」及び「往来危険による汽車転覆」は、汽車に限った行為ではなく、電車や船舶といった公共交通機関の乗り物に対して、破壊行為を行った場合に罪が問われるものです。
テロ行為が目的ではなく、イタズラで線路に置き石をした結果、電車が脱線・転覆して死者が出てしまうとこの罪に問われる可能性があり、「死刑」が求刑される場合があります。
「激発物破裂」は、いわゆる爆破テロにあたります。
故意に爆弾を爆発させたり、ボイラーなど破壊されると爆発して広範囲な被害を及ぼすような施設を破壊したりするとこの罪に問われます。
ただし、これは爆破によって人を殺傷する可能性のある場所で爆破をした場合に限られますので、立ち入り禁止区域を設けるなどしてダイナマイトなどによる砕石行為をしても犯罪ではありません。
そして「現住建造物等浸害」は、人が住んでいる住居や施設、あるいは公共交通機関を水浸しにする犯罪です。
現実社会ではマンションやアパートの高層階で水道を出しっぱなしにして、下の階の部屋を水浸しにすれば、この罪に問われる可能性がありますが、本来この犯罪はその昔、石炭産業が盛んだった頃に坑道などへ故意に水を流し込むといった、一種のテロ行為に対して定められたもので、家屋に関する場合はこの罪で起訴される可能性はほぼありません。
以上のように、刑罰として「死刑」が規定されている犯罪の半分以上は、国家に対する反逆行為と社会の治安を乱すテロ行為であると言えます。
一般人が起こす可能性がある「死刑」になる犯罪
国家に対する反逆行為やテロではなく、一般人が犯罪者となり、「死刑」の判決を受ける可能性があるものは、「現住建造物等放火」、「殺人」、「強盗致致死傷」、「強盗・強制性行等及び同致死」の4つの犯罪です。
近年ではテロ行為を起こすような人物が紛れ込んでいることもあり、必ずしも一般人が起こさないとは言えませんが、犯罪行為の対象が国家や社会であるという意味で、こういう分類をして説明します。
他人を死に至らしめた場合に「死刑」が求刑される
「現住建造物等放火」は、火事を起こすことを目的にして火をつけるような、刑法第二編第九章(第108条~118条)に定められる「放火及び失火の罪」の一種です。
放火の中でも、現住建造物という、人が住んでいたり人の出入りが日常的にあったりする家や建物、もしくは汽車や電車を狙って放火するのが「現住建造物等放火」になります。
火事が起こった結果、人が死ぬ可能性が高いため、「放火及び失火の罪」の中でも、「現住建造物等放火」の刑罰に「死刑」が定められているのです。
「死刑」が求刑される可能性がある犯罪で、最も理解しやすいのが「殺人」でしょう。
「目には目を」という古くからの刑罰の考え方で、被害者を失った遺族の無念を晴らす意味でも、人を殺したらその報いは「死刑」だという考え方です。
「死刑」制度の是非はありますが、現行刑法上はそう規定されています。
ただし「殺人罪」が問われるのは、あくまで相手を死なせてしまった時に、殺す気で殺したかという殺意の有無が問題になります。
交通事故で加害者の過失によって被害者が死亡してしまった場合には、「殺人罪」は適用されず「過失致死罪」に問われ、死刑が求刑されることはありません。
「強盗致死傷」は、いわゆる強盗殺人のことで、強盗をしたと同時に人を死なせてしまった場合の罪です。
殺人と致死の違いは、殺す気で殺すのと、殺意はなかったけれど結果的に相手が死んでしまった、の違いとなります。
単に盗みを働く「窃盗罪」と比べて、被害者から無理やり盗む「強盗罪」とは、その刑罰に格段の差がありますが、被害者が負った怪我の程度によって、同じ強盗でも刑罰は懲役刑から、最高で「死刑」になる可能性があるのです。
「強盗・強制性行等及び同致死」は、強盗犯が強盗現場で強姦をする行為で、その結果被害者を死に至らしめた場合には、「死刑」が求刑される場合があります。
この「強盗・強制性行等罪」は、2017年の刑法改正前には「強盗強姦罪」と呼ばれていました。
「死刑」の基準は揺らいでいる
長らく日本の刑事裁判においては、「永山基準」と呼ばれる死刑求刑の基準がありました。
1968年に4人を射殺した永山則夫元死刑囚の裁判において、83年に最高裁判所が死刑適用の基準として挙げたものですが、基準の内容に複数の命を奪った場合に「死刑」の判決が下されるべきというものがあったのです。
「死刑」になるのは2人以上殺した場合で、殺したのが1人だと最高でも無期懲役といった不文律が存在したとも言われています。
しかし、裁判員制度が導入された現在、事件の内容が非常に悪質なものであれば、被害者が1人であっても「死刑」が求刑され、そのまま「死刑」の判決が下されるケースも出てきています。
犯罪に対する厳罰化の流れということもありますが、「死刑」制度廃止の議論と合わせて、今後も世間の注目を集める点であると言えます。
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