食い逃げ、無銭飲食は犯罪!詐欺罪に問われる可能性
- 2024年7月9日
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食い逃げは「詐欺罪」に問われる?
比較的軽微な犯罪に思える無銭飲食、いわゆる食い逃げは、通報され警察に逮捕された場合には、状況によれば刑事事件として起訴されてしまうような犯罪行為なのです。
そしてその罪状は、他人の財物を盗んだ場合に適用される「窃盗罪」ではなく、他人を欺いて不法の利益を得る「詐欺罪」が問われる可能性があるのです。
「詐欺罪」といえば、犯人が策略をめぐらせて他人を騙す知能的な犯罪だと考える人も多いことでしょう。しかし、そのような知的な犯罪と対極にある、衝動的で無計画な食い逃げも、起訴される時の罪状は「詐欺罪」となるのです。
最初から飲食代金を支払う気がないにもかかわらず、飲食店の店員に食材を調理させるなどのサービスを提供させるため、ただ単に他人の財物を盗む「窃盗罪」とは違うのです。
典型的な食い逃げの状況を考える
「詐欺罪」は、相手を騙して有形・無形のサービスを提供させるという犯罪であるということがポイントになります。
食い逃げの典型的な状況は、最初から代金を支払う気がなく、あるいは食事の代金に見合う現金や支払い方法を持たずに料理を注文し、提供された食事を食べ、そのまま代金の支払いをせずに逃げるというものでしょう。
逃げる方法は、飲食後に店員の目を盗んで店から立ち去って逃亡したり、すぐに戻ると店員に告げて店から出て、そのまま戻らなかったりするような方法が考えられます。
この場合、どこの時点で食い逃げを図ろうと考えたかについては、「詐欺罪」が成立するかどうかの重要な要件になりますが、後に詳しく説明します。
ちなみに、一旦食い逃げを図ったものの、急に反省して飲食代金を支払いに戻っても、「詐欺罪」(「詐欺未遂罪」)は成立するとされています。
食い逃げと同種に「詐欺罪」に問われる犯罪には、電車やバス、あるいはタクシーといった交通機関の無賃乗車があります。
これらの行為で逮捕され、検察に起訴される場合、起訴状に書かれる罪状は「詐欺罪」になるのです。
食い逃げが「詐欺罪」以外の犯罪となる場合
店員の隙を突いて代金を支払わずに逃げるような、典型的な食い逃げのケースであれば「詐欺罪」が問われるわけですが、その他にはさらに重い罪が問われることがあります。
例えば、店員を脅して代金を踏み倒すような行為は「恐喝罪」が問われることになる可能性がありますし、追いかけてきた店員を振りほどいて逃げた場合には「暴行罪」となることもあります。
ほんの出来心からの行為や、食うに困る経済状態だったとしてもそれが刑罰を軽くすることはありませんので、ただの食い逃げだと軽く手を染めてしまうことは避けましょう。
「詐欺罪」の定義と刑罰は?
食い逃げは「詐欺罪」となる可能性がある犯罪ですが、そもそも「詐欺罪」とはどういうものか、ここでまとめておきましょう。
「詐欺罪」は、刑法第246条に以下のように定義されています。
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
「詐欺罪」とは、人を欺いて財物を交付させたり、財産上の不法の利益を得たり、これを得させる行為とされています。また、実際に利益を得なくても、行為自体が行われた場合は「詐欺罪」の未遂として犯罪となります。
刑罰は10年以下の懲役と、非常にあいまいに決められているだけですが、「詐欺」によって得た利益の大きさや、悪質な犯行かどうかで量刑が決められます。
食い逃げの場合は、被害金額がそれほど大きくないため、後に述べるように、たとえ「詐欺罪」が成立したとしても短期間の懲役になると考えられます。
「詐欺」の手口は増え、巧妙化している
近年、「詐欺」の手口は多様化、巧妙化しています。
特にオレオレ詐欺と呼ばれる振り込み詐欺は巧妙化し、騙されて被害者となってしまうのは、決して高齢者だけではありません。
キャッシュカードやメールから個人情報を盗み出し悪用するフィッシング詐欺、インターネットのサイトを利用したワンクリック詐欺、架空商品を出品するオークション詐欺は、誰もが被害者になり得るものです。
伝統的な手口としては、返すつもりのないお金を借りて逃げる借用詐欺、代金を支払うつもりがないのに食事をして逃げる無銭飲食、駅員の目を逃れて運賃を支払わずに交通機関等に乗車、あるいはキセル行為を働く無賃乗車があり、犯行の意識があれば誰でも手を染めてしまいかねません。
その他にもわざと交通事故を起こして保険金を騙し取る保険金詐欺、結婚をほのめかして金品をせしめてそのまま姿を消す結婚詐欺、街頭で募金を集める振りをして善意のお金を騙し取る募金詐欺など、後で聞いてみれば明らかに詐欺だとわかるような行為でも、騙されている被害者は気づかないのです。
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生活困窮者の食い逃げ行為が問題視されている
警察庁の統計などで「無銭」と分類されているものには、無銭飲食と無賃乗車、無銭宿泊が含まれているため、無銭飲食、いわゆる食い逃げの公式統計はありません。
飲食店における店員数が減少したころ、レジ前が無人状態になってしまうために金銭を狙った強盗や食い逃げが社会問題となりましたが、近年では前払い制や食券の導入など、店舗側の対策が進み、食い逃げが取りざたされることは少なくなりました。
しかし一方で、近年では生活困窮者が繰り返す食い逃げが問題視されています。それほど高額ではない食事を行い、確信犯的に食い逃げをした結果、通報されあっさりと警察に捕まるということを繰り返す人がいるのです。
食い逃げとはいえ何度も繰り返すと、実刑判決が下り懲役刑に服することになり、数日間は雨風をしのげる警察施設の中で、三度の食事が保障される生活を送ることができるのです。
仕事にも就けず困窮の末の犯行であっても、このような行為は許されることではありませんが、このような人を助ける社会的なセーフティーネットが望まれるところです。
食い逃げで「詐欺罪」が適用された時の刑罰は?
食い逃げは「詐欺罪」が適用される可能性がありますが、実際に起訴され刑罰が科されるとしたら、どれくらいの量刑となるのでしょうか。
刑法で定められている「詐欺罪」の刑罰は、10年以下の懲役とされています。
最長で10年の懲役となる可能性があるのですが、過去の判例では1年程度の懲役が多いようです。
「詐欺罪」の最高刑は10年の懲役ですから、食い逃げは「詐欺」という犯罪の中でも、比較的軽い刑罰で済むと考えて良いでしょう。
初犯ならば、たいていは執行猶予つきの判決
そして食い逃げの場合は、初犯でいきなり実刑が科されることは稀だとされています。たいていのケースでは2~3年の執行猶予がついていますので、よほど悪質な行為でない限りは、いきなり懲役となる可能性は低いでしょう。
しかしながら被害者の心証が悪かったり、悪態をついたりなど反省の姿勢が見られない場合は、その限りではありません。もし家族や親族、友人・知人が食い逃げで逮捕されてしまい、力になりたいと考えるならば、弁護士に相談し、対応をお願いするのが良策です。
国選弁護人をつけることも可能
食い逃げ行為をする人は、本当にお金に困った人が多いと思われます。住所不定のホームレスも多く、仕事も住むところもなく、切羽詰って逮捕されることを目的の食い逃げということもあるでしょう。
私選弁護人を雇う余裕がなければ、国選弁護人をつけてもらうことを考えましょう。「詐欺罪」の最高刑は10年の懲役となりますので、被疑者国選弁護人を雇うことが可能となる事件に相当します。
いくらお金に困って捨て鉢になっていても、弁護士なしで刑事手続きを行うことになれば、人権を守ることもできなくなる可能性がありますので、遠慮なく国選弁護人を依頼し、身の処し方を相談しましょう。
「詐欺罪」とならない食い逃げ行為がある!?
ここまで、食い逃げは「詐欺罪」となる可能性があると説明してきましたが、実は食い逃げを「詐欺罪」で立件することは難しく、民事上の弁済だけで済むケースが多いのです。
だからといって食い逃げをしても警察に捕まらないということは決してありませんが、知識として知っておいた方が良い点です。
「詐欺罪」成立の要件では、最初から騙す気があったかどうか、が重要なのです。
最初から騙す気があったかどうかが重要
食い逃げの場合は、最初から飲食代を払う気があったかどうかが問題になります。
例えば、飲食店に入り食事をして、支払い段階で財布を持ってくるのを忘れたのに気づいた、といったケースでは「詐欺罪」は成立するのでしょうか?
普通ならば、店舗側と話をして支払いを待ってもらい、誰かにお金を持ってきてもらう、あるいは私物を店に預けて財布を取りに戻るなど、きちんと食事代を支払うことでしょう。
ところが、お金がないことに気づいた時点で翻意し、代金を支払うことなく、店員の目を盗んでそのまま逃げてしまった場合には、「詐欺罪」は成立しないのです。
あくまでも最初から騙すつもりで食事をし、支払いを免れるために逃げた場合にのみ「詐欺罪」は成立します。
処罰できない「利益窃盗」
最初から騙すつもりはないので、これは「利益窃盗」という行為になります。
刑法上の「窃盗」にはいわゆる2項(お金や物ではない、形のない経済的利益を得ることに対する規定)がないため、「利益窃盗」という不可罰となり、刑事上で処罰ができない行為となります。
いわゆる法の抜け穴とも言える行為ですが、現実的には、後に逃げたことが発覚し警察に逮捕され、「詐欺罪」として追求されるでしょう。
最初から騙すつもりはなかったと言い張っても、誰にも信じてもらえないかもしれません。弁護士に相談し、対応方法を探るべきでしょう。
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