軽犯罪法と迷惑防止条例、盗撮に適用される法令の違い
- 2021年7月2日
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- 犯罪の種類
- 刑事事件弁護士相談広場
盗撮で逮捕されるときに適用される法令は2つある
「盗撮の疑いで逮捕された」というフレーズ自体は、新聞やニュースなど見かけたこともあるかと思います。もちろん盗撮はしてはいけないことですし、盗撮行為をすれば逮捕されるのは当然です。
しかし、刑法などに「盗撮罪」という犯罪は存在しません。実は盗撮事件では、どのような場所でどのような盗撮行為を行ったかによって適用される法令が変わってくるようになっており、少しややこしい犯罪になります。そこで、今回は盗撮事件がどのような法律で、犯罪として取り扱われるのかを説明していきたいと思います。
犯罪は、全て刑法で規定されていると思われている方も多いことでしょう。日本は罪刑法定主義が採用されているので犯罪は法律で定められているのですが、先程述べたように、「盗撮罪」という犯罪は存在しませんし、刑法にも盗撮に関する規定は一切ありません。
盗撮は、どのような形で行われるかによって、「軽犯罪法」と「迷惑防止条例」のいずれかで処罰されます。そして、迷惑防止条例は、「条例」ですので、都道府県ごとに制定されるものです。したがって、軽犯罪法の内容が当然一律であるのに対して、迷惑防止条例は、都道府県ごとに内容が変わってきます。
つまり、どの都道府県で盗撮をするかによって、微妙に処罰範囲や刑罰の程度に差異が生まれることになるわけです。
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軽犯罪法と迷惑防止条例の違いとは
それでは、軽犯罪法と迷惑防止条例では、それぞれどのような盗撮行為をした場合に適用されるのでしょうか?
軽犯罪法が適用される盗撮
軽犯罪法では、主に公共の場所ではない場所で行われる盗撮を規制しています。私有地や自宅内部、ビルのトイレなど、公共の場所とは言えない所で盗撮がされた場合、軽犯罪法で処罰されることになります。
軽犯罪法に触れる場合、拘留か科料の処分が下されます。拘留の場合、1日以上30日未満の身体拘束をされます。科料の場合、1000円から1万円未満の範囲でお金を支払わなければいけません。
迷惑防止条例で規制される盗撮
迷惑防止条例では、公共の場所で行われる盗撮を規制しています。電車やバスなどの公共の乗り物や、駅構内、店舗などの公共の場所で盗撮がされた場合、迷惑防止条例で処罰されることになります。もちろん、どこまでの範囲が迷惑防止条例の規制範囲となるかは条例の内容によって異なります。
迷惑防止条例に触れる場合、懲役か罰金が科されると定められることが通常ですが、その程度は条例ごとに差があります。例えば東京都の定める迷惑防止条例の場合、1年以下の懲役か100万円以下の罰金が科されることになります。しかし、埼玉県の定める迷惑防止条例では、6ヶ月以下の懲役か50万円以下の罰金が科されるとされています。
東京都の条例は下記のようになっており、公共の場所以外の盗撮行為でも適用される可能性があります。
公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
第5条
何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
(2) 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体 を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し 向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる ような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用 し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)
軽犯罪法と迷惑防止条例のどちらが適用されるか
上で説明した通り、軽犯罪法と迷惑防止条例では規定される刑罰の重さに差があります。そして、迷惑防止条例の方が、重い刑罰を科されることになります。
そこで、どちらの法令にあたるのかを考える際には、問題となっている盗撮事件が迷惑防止条例の規制対象となるかどうかをまずは検討します。盗撮事件が起こった都道府県の定める迷惑防止条例の処罰範囲になっているのか、つまり、どのような場所で盗撮が行われたのかを判断することになります。
迷惑防止条例の規制範囲内にあるのであればそのまま迷惑防止条例で逮捕され、他方、迷惑防止条例の規制範囲内から漏れるのであれば軽犯罪法で逮捕されることになります。
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軽犯罪法や迷惑防止条例で逮捕される状況
盗撮事件の多くが、現行犯逮捕によるものです。現行犯逮捕とは、犯罪が行われたそのときの、犯罪が行われた場所で、あるいは時間的接着性・場所的接着性が認められる場合に、捜査機関などによって身柄を拘束されることを言います。
たとえば、駅のエスカレーターで女性のスカート内部を盗撮しようとスマートフォンを差し向け撮影している時に、私服警官に囲まれてそのまま逮捕されるような場合、盗撮をしていた相手の女性に捕まえられる場合などが典型的です。
ただ、盗撮事件の全てが現行犯逮捕によるわけではありません。通常逮捕されることも、もちろんあります。たとえば、電車内で盗撮行為に及んでいるところを、被害者女性や一般客に取り押さえられ、駅について駅員に身柄が引き渡される際に隙を見てその場から逃走するようなケースを考えてみて下さい。
盗撮現場から逃亡しているので、そのまま逃げ切れることができれば、その場で現行犯逮捕されることは回避できます。しかし、駅や街中の防犯カメラや定期の利用状況などから、逃亡者がどこの誰であるかは簡単に調べることができます。捜査の結果、逃走した盗撮犯の自宅住所が割れると、後日、警察が逮捕令状をもってきて通常逮捕されることになります。
つまり、盗撮事件を起こしてそれが発覚した場合は必ず逮捕されることになります。軽犯罪法で処罰される盗撮なのか、迷惑防止条例で処罰される盗撮かは関係ありません。なお、14歳未満が盗撮事件を起こした場合は、刑事処分を科されることはないと刑法で定められています。
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盗撮で逮捕された後の流れ
一般の方は、盗撮で逮捕されると有罪となり、罪が確定してしまうと勘違いされている方も多いことです。しかし、実はそうではありません。確かに罪を犯した可能性がとても高いから逮捕されるのですが、その段階ではまだ何も確定していません。
逮捕後の一般的な流れ
警察に逮捕されると、48時間以内に検察官に身柄が送られます。身柄を引き取った検察官は、24時間以内にこの事件を刑事裁判にかける必要があるのかを判断します。刑事裁判にかける必要があれば起訴処分が下され、刑事裁判を経て刑罰が確定します。
もしも、検察官が刑事裁判にかける必要がないと判断すれば不起訴処分が下され、その段階で事件は終了します。
盗撮で逮捕されても前科がつかないことがある
ここで大切なことは、盗撮で逮捕されたとしても、必ずしも刑事裁判にかけられるわけではないということです。検察官の不起訴処分を得ることができれば前科はつきませんし、盗撮の場合、この不起訴処分獲得を狙える可能性が比較的高いのです。
盗撮事件は、刑法などで定められる多くの犯罪と比べると、比較的軽い犯罪です。殺人や強盗などと比べると分かり易いでしょう。このような軽い犯罪の場合、「確かに犯罪はあったかもしれないが、諸般の事情を考慮したとき、わざわざ刑事裁判にかける必要はない」と判断され、不起訴処分が下されるケースがあるのです。
前科をつけないための条件とは?
盗撮は簡単に手を染めることができる犯罪です。そして、性犯罪でもありますから、どうしても再犯率も高くなってしまいます。何度も盗撮で逮捕された経歴があったり、はじめて逮捕されたとしても、数々の証拠物件から盗撮歴がかなりあることが判明したりするような場合だと、どうしても悪質であると判断されるので、不起訴処分を獲得しにくくなります。そのような場合には、罰金刑のみ、執行猶予付きの判決などを目指すことになります。
しかし、盗撮で逮捕されたのが初めてで、しかもデータ等の証拠からも余罪があるとは認められないようなケースだと、先程の例に比べると、明らかに悪質性は低いでしょう。そして、被害者との間で示談も成立していて、被害者が事件を終了させる意思、盗撮犯に対して刑事処罰を望まない意思をもっているような事情があれば、不起訴処分を獲得できる可能性もぐっと高まります。
このように、事情次第では、盗撮で逮捕されたとしても、前科がつくことなく事件が終了する道も考えられるのです。
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盗撮事件で逮捕されたらすぐに弁護士に相談を
以上で説明したように、軽犯罪法・迷惑防止条例違反のいずれで逮捕されたとしても、肩を落として全てを諦める必要はありません。もちろん盗撮行為は犯罪になりますし、盗撮で捕まったことはしっかりと反省しなければなりませんが、その後の人生全てを諦める必要はありません。
今後の社会復帰・更生のためにも、できるだけ有利な状況を作り出すことは、何も悪いことではありません。そして、その有利な状況を作り出すためには、刑事事件に強い弁護士への相談が必須です。どのような供述をすれば不利にならないのか助言を受けることもできますし、被害者との示談を進めてもくれます。法律の専門家に頼らないで、それ以上の結果を獲得することは不可能です。
盗撮事件を起こしてしまった以上、逮捕されるのは避けることができません。その代わり、できるだけ早期に盗撮事件に強い弁護士に相談することで、スムーズに社会復帰するためにも、有利な状況を生み出すようにしましょう。
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