児童虐待防止法とは?子どもへの体罰は禁止!児童福祉法改正のポイント

児童虐待のイメージ

児童虐待防止法とは

児童虐待防止法(児童虐待の防止等に関する法律)は、18歳未満の子ども(児童)を虐待から守るための法律です。児童に対する虐待防止、発見した場合の保護規定などについて定められています。

従来の児童福祉法から踏み込んだ内容の法律として制定

児童虐待問題への対策としては、もともと「児童福祉法」という法律が存在していました。しかし、児童相談所が積極的に立ち入り調査できないなどの実態があったため、法律が十分に機能していないという批判の声があったのです。

そこで、2000年、従来の児童福祉法から一歩踏み込んだ内容の児童虐待防止法が制定されることになりました。

児童虐待防止法の内容

児童虐待防止法では、児童虐待の防止・早期発見のために様々な規定を設けています。

「虐待」の禁止

児童虐待防止法では、親や児童養護施設の職員、成年後見人といった「保護者」が子どもに対して虐待を行うことを禁止しています。

また、以下の4つの行為を虐待として明確に規定しています。

児童の身体に外傷を生じ、又は生じる恐れのある暴行を加えること

暴行を加えてケガをさせるなど、身体的な虐待を加えることを指します。

なお、2019年改正では、体罰の禁止も明文で定められました。「しつけだから」といって、子どもへの暴力を正当化することは許されません。

児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をすること

児童に対してわいせつな行為を強要する、児童ポルノに出演させるといった、性的虐待をすることを指します。

児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること

いわゆるネグレクトや、極端に食事の量を減らすなどの行為が当てはまります。さらに、同居人が子どもを虐待している状態を放置する行為も、このタイプの虐待に含まれます。

児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと

暴言を吐いたり、子どもの目の前で配偶者に暴力をふるったりするなどして、心理的に虐待を行うことを指します。

虐待の早期発見・予防に関する義務

学校の教職員、医師、保健師、弁護士などの職業についている人については、児童虐待の早期発見に努めることを求めています。

児童虐待を発見した場合の通告義務

もし虐待が疑われる子どもを発見した場合は、児童相談所や福祉事務所に速やかに通告しなければならないと定められています。

通告を受けた後の対応に関する規定

通告を受けた後の対応について、各自治体・児童相談所などの行政側に強力な権限を認める規定があります。これらの規定により、家庭への強制的な立ち入り捜査、都道府県知事や児童相談所の要請による警察の介入なども可能になりました。

虐待を行った保護者の指導に関する規定

虐待を行った保護者は児童相談所の指導を受けるべきことを定めています。

また、行政側が虐待を行った保護者に対して医学的・心理的指導を行うよう努めることも定められています。

なお、保護者が指導に従わないときには、子どもの一時保護や親権の停止などの措置が取られることについても明記されています。

虐待を受けた児童の支援に関する規定

虐待を受けた児童に対する教育、自立支援などについても定められています。

児童虐待防止法と児童福祉法の関係

児童虐待法は何度か改正されており、2019年には

  • 体罰の禁止
  • 児童相談所の介入機能強化

といった重要な改正がありました。

そして、児童虐待防止法の制定・改正に合わせる形で、児童福祉法の一部も改正されています。

児童虐待防止法改正に合わせた主な改正点

2008年の改正では、立ち入り調査を拒否し場合の罰則強化、「要保護児童対策地域協議会」の設置義務などに関する改正が行われました。

さらに、2019年改正では、児童の権利擁護に関する事項、さらに「児童の健康及び心身の発達に関する指導をつかさどる所員」に医師・保健師をそれぞれ1人以上含めることといった規定が盛り込まれています。

児童虐待防止法の課題点と2019年改正

一定の評価もされている児童虐待防止法ですが、課題もあります。

児童虐待防止法制定後も虐待事件は後を絶ちません。児童相談所が事態を把握していたにもかかわらず、子どもが虐待死する事件も続出しています。

そのため、「既存の仕組みが機能していなかったのでは」という根強い批判があるのです。

2019年改正のポイント

2019年の改正も、そうした反省点を踏まえたものといえます。

今回の改正では、児童相談所間の引き継ぎの徹底を定めるなど行政側の児童虐待問題に対する対応強化が図られています。

さらに、虐待を行った親が「しつけ」を理由にすることが多いという事情も受けて、体罰が明文で禁止されました。

もっとも、このしつけと体罰に関する議論はまだ始まったばかりです。今後の議論の展開が待たれるところです。

児童虐待防止法に違反するとどうなるのか

児童虐待防止法に保護者が違反した場合、保護者側は様々なペナルティを受ける可能性があります。

子どもと引き離されることがある

児童相談所長および都道府県知事は、その判断で子どもを一時保護し、虐待を行う親から子どもを引き離す権限を持ちます。

児童虐待の通告があった場合、都道府県は児童養護施設などに子どもを入所させる措置をとることができます。もし親の同意がなかった場合でも、家庭裁判所の許可があれば子どもを入所させることが可能になります。

子どもとの面会・通信を制限される可能性がある

子どもとのやり取りにも制限が課される可能性があります。

児童相談所などは、一時保護された児童について、必要があるときは面会や通信の全部または一部を制限できます。

その場合、面会はもちろん、メールや電話、手紙などでのやり取りも禁止されることになります。

子どもに接近することを禁止される可能性がある

面会・通信制限となった保護者に対し、児童相談所などは必要に応じて接近禁止を命じることもできます。

その場合、子どもに接触するのはもちろんのこと、子どもを遠くから見守るなどの行為も禁止されることになります。

親権停止になる場合もある

子どもの財産管理権を乱用する、命の危機があるなどの事情があるときは、親の親権を停止させる措置が取られることがあります。

逮捕のおそれがある

虐待の多くは刑法上の犯罪にあたるため、発覚すれば逮捕・起訴される可能性があります。

たとえば、暴力をふるってケガをさせた場合は傷害罪に該当しますし、性的虐待を加えていた場合は監護者性交等罪や監護者わいせつ罪などに該当します。

また、児童虐待については、児童福祉法にも罰則が設けられているため、児童福祉法違反で逮捕される可能性もあります。

虐待が疑われる児童を発見した場合の対処法

虐待の早期発見・予防のためには、周囲にいる大人の協力も非常に重要です。
実際、児童虐待防止法では、虐待を疑う児童を発見した場合は、児童相談所などへの通告を義務づけています。

見逃してはいけない虐待のサインとは

虐待のサインを見つけたら、すぐに通告することも検討しましょう。
具体的な虐待のサインとしては、次のようなものがあります。

子ども側のサイン

暴力やネグレクト、性的虐待などを疑わせるサインがあったら、児童相談所に相談しましょう。

  • 身体に不自然なあざ、外傷、やけどなどがある
  • 表情に乏しい、あるいは情緒不安定で落ち着きがない
  • いつも汚れた衣服や季節に合わない服を着ている
  • 栄養失調や発達の遅れが見られる
  • 家に帰りたがらない
  • 年齢不相応の性的な言葉や性的な行為が見られる
  • 基本的な生活習慣が身についていない

親側のサイン

親の様子からも虐待の兆候を知ることができます。

  • 子どものケガや傷跡などに対して不自然な説明をしている
  • 子どもに否定的、あるいは無関心な態度を取る
  • 小さな子どもを置いたまま頻繁に外出している
  • 夫婦間で暴力がある
  • 体罰を正当化する、きょうだい間を差別するような言動が見られる
  • ひどく疲れている、あるいは子育てに悩んでいる様子が見られる

虐待が疑われる場合にやるべきこととは

虐待はときに子どもの命をもおびやかすおそれもあるため、早期発見が重要です。また、一般市民には、虐待のサインを見つけたときには通報(通告)の義務もあります。

通告先・相談先

先ほど紹介したような虐待のサインを見つけたら、各自治体の虐待ホットライン・虐待通報ダイヤルや児童相談所全国共通(189ダイヤル)へ相談・通告を行いましょう。

子どもに命の危険が迫っているなど緊急時には警察(110番)に通報するのもおすすめです。

通告の方法

児童虐待の相談・通告は匿名でもできます。匿名通報した場合、通報を行った人の身元が子どもの親などに特定される心配はありません。

児童虐待防止法を理解することが子どもの命を救うことにつながる

児童虐待に関する児童相談所への相談件数は年々増加しています。

悲惨な児童虐待を防止・早期発見するためには、一人一人の児童虐待への理解、そして行動が欠かせません。

弁護士は法律の専門家として、児童虐待問題などを始めとする家庭問題の相談にものっています。

配偶者が子どもに暴力をふるっている、親戚の子どもの様子がおかしいなど、何か不安なことがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。

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