書類送検とは?事件が警察から検察に送られること
- 2024年7月9日
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送検とは?
送検とは、検察に事件の手続きが送られることです。
逮捕された被疑者の身柄ごと検察に移送される「身柄送検」と、逮捕はされたものの釈放され、あるいは逮捕されずに書類だけが検察に送られる「書類送検」という2つのケースがあります。
ニュースなどでよく「書類送検」という言葉を見聞きしますが、これは逮捕されたのか、逮捕されていないのか、または有罪なのか無罪なのか、とはっきり知っている人は少ないのではないかと思われます。実は「書類送検」とはこれらすべてに可能性があり、決してひと言で済まされるものではありません。
「送検」は、刑事訴訟法第246条に規定されています。
刑事訴訟法
第二百四十六条 司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。
条文からも分かるように、「送検」とは実際の法律上の用語ではなく、「事件を検察官に送致する」と言うのが正しいのです。
逮捕を伴う身柄事件については、被疑者の身柄と書類や証拠物が検察官に移送され、逮捕を伴わない場合は書類と証拠物のみが送致されるのです。その後の大まかな流れは、検察が起訴するかしないかを決定し、起訴されて裁判で有罪か無罪かの判決が下されることになります。
「送検」はどこからどこへ?
被疑者が逮捕されている身柄事件の場合、警察署内にある留置場で身柄を拘束され取調べを受けた被疑者は、逮捕の翌日か遅くても翌々日の朝には、必ず警察署を出て検察庁へ送致されます。法律的に送致とは、公的機関(捜査機関)が抱えている案件を、別の官庁の機関へ移譲することを指します。
刑事事件の場合、事件を認知して被疑者を特定し逮捕するのは警察ですが、その事件を捜査して刑事裁判を起こして、裁判所に裁いてもらうかどうかを判断するのは検察庁となります。警察は警察庁が所轄する組織で、一方の検察庁は法務省の所属機関となりますので、2つの組織間で案件をやりとりすることは送致と呼ばれるわけです。
刑事事件における警察と検察間の事件のやり取りを一般的に「送検」と呼ぶのです。
検察が被疑者を逮捕した場合は?
社会的に影響の大きい、政治家や著名人の刑事事件においては、その必要性に応じて検察が捜査し逮捕を行う場合があります。この場合には警察が不在となるので「送検」の必要はありませんが、警察が逮捕した場合と比べて、勾留前の時間制限は短くなります。
検察が逮捕してから公訴の提起をするかどうかを決定するまでの期限は48時間となり、実質的には警察が逮捕した場合よりも24時間短くなります。しかし被疑者に決定的な嫌疑があり、その後の勾留に関しても筋書きを整えて逮捕に臨むと考えられるため、与えられた時間は48時間で十分なのかもしれません。
逮捕後の手続きには時間制限がある
刑事事件における手続きには、それぞれ時間制限が設けられています。
警察や検察に裁判所が発付する逮捕状の期限は原則として7日間であり、警察が逮捕してから検察に身柄を移すまでは最長48時間、検察が起訴か不起訴かを決定するのは最長24時間、勾留が認められるのは10日間、勾留延長は10日間などと定められています。
逮捕という行為は被疑者の移動の自由などを奪うものですから、このような厳密な時間制限が設けられているのです。
検察における24時間は最も短いが…
刑事手続きの期限の中で、最も短いのが検察における24時間という制限です。
24時間という短い時間で、警察から送られてきた書類を精査し、被疑者の取調べを行い、被疑者を起訴するかどうかを決定するわけですが、たいていの場合は勾留請求が行われ、10日間は検察による取調べが行われることになります。勾留請求は検察が裁判所に行うものですが、明らかな犯罪の嫌疑があり、証拠隠滅や逃亡のおそれがあり、住所が定まっていないなどの要件が必要とされています。
検察が勾留請求を行うと、裁判所は被疑者に対して勾留質問を行い、勾留質問調書を作成します。そして裁判官が勾留を認めるかどうかの判断を行うのですが、勾留の必要がないと認められた場合には釈放命令が下されます。しかしたいていの場合は、勾留請求は認められてしまい、被疑者は検察による10日間の取調べを受け、それでも足りない場合はさらに10日間の勾留延長を請求することになります。
送検後は、弁護士の協力が必要になる
本項では、この送検、いわゆる検察に身柄が送られ取調べが行われることについて説明しますが、警察に逮捕され検察に送検されてしまったら、弁護士に相談することをお勧めします。
送検まで逮捕直後とも言える一連の流れで、弁護士に連絡を取ろうとしても難しいこともあり、たとえ話ができたとしても、刑事手続きの説明を受け、今後のアドバイスをもらうことくらいしかできないでしょう。しかし、その後の勾留については、先に述べた要件を満たさない限りは、許されるべきものではないのです。
不当な勾留から逃れるために弁護士の力を借り、勾留理由開示、準抗告などの手段を講じてもらい、身柄の解放を目指すべきです。
実際の「送検」手続きは?
刑事事件の被疑者は、逮捕後の手続きについて必ずしも詳しいわけではありません。取調べを受けるということは分かっていても、逮捕のショックや不安が大きく、誰に質問されているのか、自分はどこにいるのかさえ不案内なケースも多いでしょう。
ここでは、実際に逮捕されて警察から検察へと送致される際に、被疑者がどのような状態に置かれてしまうのかを説明します。
警察に逮捕され留置場で身柄を拘束されていた被疑者は、検察の所轄地域内で送致される被疑者全員がまとめて検察庁に移送されます。各警察署からは数人でも、地域内全体では数十人~百人単位となる場合もあるようです。
手錠をはめられ腰縄を打たれた被疑者が数珠つなぎとなり護送車に乗せられ、検察庁へと護送されます。この際、私語は一切禁止され、手錠はずっとはめられたままで、一瞬でも護送車の窓から外を見ることができても、外界から遮断されているということを実感するだけでしょう。
それまで警察の留置場で過ごしていた時は、異界に連れてこられただけだと思っていても、検察庁への護送を受けると、改めて世間から隔離されていることを知る時とも言われています。
検事が取調べを行う「検事調べ」
「送検」は役所間の行政手続きの一種であり、実際に逮捕されて身柄を拘束されている被疑者に「今からアナタを検察庁に送検し、検事による取調べがあります」と詳しく説明されるわけではないのです。被疑者に対して知らされるのは、検事が取調べを行う「検事調べ」に連れて行くというだけで、刑事手続きの担当が警察から検察に移ったという実感はないかもしれません。
法務省の管轄である検察庁は、被疑者の身柄を確保しておく刑事施設は拘置所しかありません。多くの拘置所は刑務所の敷地内など、交通の便が悪いところにあり、公判中の刑事被告人で常に満員状態となっているのが現状です。
そのため「送検」後も、被疑者は引き続き逮捕された時と同じ警察の留置場に身柄を拘束されることが多く、被疑者は「送検」されることによって、刑事手続きのステージが変わったことを実感できない可能性が高いのです。
「検事調べ」では何を聞かれる?
被疑者は検察庁に身柄を移された後、「検事調べ」と呼ばれる検事による取調べを受けます。
基本的には、検事が被疑者から話を聞き、被疑者を起訴するか不起訴にするかを決めることが目的ですが、取調べにおいて聞かれることは、警察で聞かれたことと同じことです。検事は警察から送られてきた書類や証拠類を元に、改めて同じ質問を被疑者に問うのですが、この際、「昨日話しただろ」という態度は禁物とされています。
なぜなら、被疑者を起訴するかしないかを決めるのは検察の検事であって、不起訴であればそこで無罪となるからです。ある意味、警察での取調べよりも、真摯な態度で臨むことが大切になってきます。しかしながら、罪状のすべて、あるいは一部でも否認していた場合には、24時間の制限時間では判断できないとされ、勾留請求が行われ認められることがほとんどです。
勾留請求が行われた被疑者は、「検事調べ」の翌日には裁判所から呼び出され、検察と同様に同じことを質問される「勾留質問」を受けることになります。この際、事件によっては国選弁護人を依頼するかどうかも聞かれますので、自身あるいは家族や友人・知人が弁護士を手配できない場合は頼ってみるべきでしょう。
前述の通り、刑事事件手続きがこの段になってしまったら弁護士に相談し、適切な対処方法をアドバイスしてもらうことが重要です。
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