刑罰の種類は生命刑、自由刑、財産刑に分けられる

刑罰

刑事事件の刑罰は刑法および特別刑法に定められていて、法律学的に「生命刑」「自由刑」「財産刑」の3つに分類されます。日本の「生命刑」には「死刑」しかなく、「自由刑」には「懲役」「禁錮」「拘留」があり、「財産刑」は基本的に「罰金刑」となります。

法律等を破ったら犯罪となり刑罰が下る

社会には慣習や道徳などさまざまな規範がありますが、国が制定した規範が法律です。この法律を破る行為が犯罪であり、法律に定められていない行為については犯罪とは呼ばれません。

日本の場合、どのような行為をすると犯罪になるのかは、六法のひとつである刑法で定められています。ちなみに、六法とは憲法、刑法、民法、商法、刑事訴訟法、民事訴訟法で、刑事事件の刑罰は基本的に刑法に定められています。

細分化され、時代に合わせて増える特別刑法

しかし一方で、複雑化する社会に対応して、刑法以外にもその定めを犯すと刑事罰が下る特別刑法も多くできています。

代表的な特別刑法は、一般人にとって身近な道路交通法や軽犯罪法、薬物系の犯罪が対象となる覚せい剤取締法ですが、さらに細かく制定され、以下のようなものもあります。

  • 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
  • 麻薬及び向精神薬取締法
  • 銃砲刀剣類所持等取締法
  • 爆発物取締罰則
  • 火炎びんの使用等の処罰に関する法律
  • 航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律
  • 航空機の強取等の処罰に関する法律(ハイジャック防止法)
  • 人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律(公害罪法)
  • 特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律
  • 破壊活動防止法
  • 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律
  • 売春防止法

これらの他に、迷惑防止条例のように、全国規模ではなく各都道府県単位で制定される条例にも刑事罰が設定されているものがあります。

以上のような法律や条令に違反すると刑事事件として立件され、刑事訴訟法で定められた刑事手続きによって犯人は裁かれ、犯罪に対しては刑罰が科されます。

判例も刑法の法源となる

以上のような法律や条例に加え、裁判所が過去に下した判例も、裁判官が裁判において準拠する基準である法源となります。

一般的に、法律は抽象的な文言で書かれているものであり、社会の変化に合わせて解釈も変わっていきますので、同じような事件に対して直近の裁判で下された判決は、重要な法源なのです。

例えば、刑法第261条に器物損壊罪が規定されていますが、何をしたら損壊なのか、ということは明記されていません。

刑法

(器物損壊等)
第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

この場合、過去の判例に、損壊とは物理的な損壊だけではなく、感情的に二度と使いたくないと思わす行為も器物損壊にあたるというものがあるため、損壊の意味は広く解釈されているのです。

日本における刑罰は3種類に分けられる

もともと人が社会秩序を守り平和に生きていく上で犯してはいけない掟を明文化したものが法律ですが、世の中が複雑になってきて守らなければいけない法律は、以上のように結構な数になっています。

その反面、罪を犯した人が受ける刑罰は次の3種類のみに分類できるのです。

刑罰の種類
  • 生命刑
  • 自由刑
  • 財産刑

気づかないうちに刑罰を受けている?

ばつ日本では、刑法や特別刑法に触れる何らかの違反を犯し、裁判所が有罪という判決を下せば、上記のような刑罰を受ける事になります。

刑事事件を起こしてしまい、送検され裁判を受け、判決を受けることは、一生のうち一度も経験しない人がほとんどです。しかし、道路交通法違反では、気がつかないうちにこれらの刑罰を受けているのです。

軽微な交通違反のほとんどは略式手続きとなり、実際の公開裁判は開かれずに有罪が確定しているわけです。

交通違反で検挙され、書類だけで手続きが行われた際、例えば赤キップを切られて罰金を払った人には、裁判で有罪判決が下されたなどという実感はないでしょう。これも実は犯罪であり、刑罰を受けているのです。

海外にあって、日本にない刑罰がある

生命刑、自由刑、財産刑というような分類をした場合、他の国にあって日本にない刑罰があります。

それは、身体刑と名誉刑です。

身体刑とは、具体的にはムチ打ち刑のように、犯罪者の身体に苦痛を与える刑で、近代以前は一般的な刑でした。この身体刑は現在でもシンガポールやマレーシア、あるいは一部のイスラム国家では行われています。

国際的には近代以降に自由刑が普及し、拷問等禁止条約を始め虐待を避ける動きが広まってきた歴史があります。欧米諸国でも、昔は普通に刑罰として設定されていましたが、犯罪者にも人権があるという近代司法の考え方から廃止されています。日本も明治維新の時、欧米諸国に倣って近代司法を取り入れたことから身体刑はなくなりました。

名誉刑とは、罪を犯した者から名誉に関わる権利や社会的な地位を奪うことですが、現在ではほとんど姿を消していると言われています。

以下の項では、現在日本にある生命刑、自由刑、財産刑について、それぞれ詳しく説明していきます。

罪を犯した者の命を奪う「生命刑」

日本で「生命刑」に該当する刑は「死刑」です。

人の生命を奪う刑罰となり、「極刑」や「処刑」といった婉曲的な表現で表されることも多くあります。そして「死刑」の方法は、以下の通り刑法第11条に定められています。

刑法

(死刑)
第十一条 死刑は、刑事施設内において、絞首して執行する。
2 死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで刑事施設に拘置する。

日本では、現在のところ、この他の方法は検討されていませせん。

近年では、死刑囚に苦痛を与えないと言われている薬殺などを導入せよという声もあり、「死刑」の賛否以前に執行方法も考えるべきだという見方もあります。

ちなみに先進国のうちでも「死刑」が行われているアメリカは、州によって違いますが、絞首、銃殺、薬殺、ガス室、電気椅子が法律上はまだ残っている場所が存在します。

中東では、現在でも石打などの方法が行われている国もあります。

「生命刑」である「死刑」になる犯罪は?

日本の刑法において、刑罰として「死刑」になるのは、内乱(第77条)、外患誘致(81条)、外患援助(82条)、現住建造物等放火(108条)、激発物破裂(117条)、現住建造物等浸害(119条)、汽車転覆等及び同致死(126条)、往来危険による汽車転覆(127条)、水道毒物等混入及び同致死(146条)、殺人(199条)、強盗致致死傷(240条)、強盗・強制性行等及び同致死(241条)の12種類です。

これらの罪のほとんどは、「死刑または無期懲役に処する」などと規定していて、「死刑」以外の刑罰となることがあります。

しかし唯一、外患誘致(81条)だけは、「死刑に処する」と定められています。

刑法

(外患誘致)
第八十一条 外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。

外患誘致とは、条文の通り、外国と通じて日本に対して武力攻撃を行った罪ですが、この罪が成立すれば必ず「死刑」の刑罰を受けることになります。

一方、少年法第51条に定められているように、被告人が18歳未満の場合は、「死刑」の刑罰を受けることはありません。

少年法

(死刑と無期刑の緩和)
第五十一条 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、死刑をもつて処断すべきときは、無期刑を科する。
2 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、無期刑をもつて処断すべきときであっても、有期の懲役又は禁錮を科することができる。この場合において、その刑は、十年以上二十年以下において言い渡す。

たびたび少年法が壁となり、18歳未満の者による残虐な行為が「極刑」に処せられないと社会問題になることがあります。しかしながら次に述べるように世界的には「死刑」廃止の風潮にあり、合わせて考えるべきものだと思われます。

世界的には、「死刑」廃止が広がっている

現在、先進国で「死刑」制度が残っている国は、日本とアメリカのみです。

アジアでも中国やインドなど、中東でも多くの国では「死刑」の処罰がありますが、韓国では制度は残っていながらも、1997年以降「死刑」は執行されていません。

世界的には、人間の命を無理矢理奪う「死刑」は廃止されるべきという流れが強まっていますが、日本も含め「死刑」を廃止しないだけではなく、まだ実際に執行をしている国はまだまだ多いのです。

罪を犯した者の身柄を拘束「自由刑」

刑罰の3つの種類を聞いて、一般の方が最も想像しにくいのが「自由刑」かもしれません。

「自由刑」とは、罪を犯した者の身柄を拘束する刑罰となり、具体的には「懲役」「禁錮」「拘留」となります。

これらの刑罰は刑務所などの刑事施設に罪を犯した者を収容し、移動や生活を大幅に制限する刑罰であり、自由が制限されるために「自由刑」と呼ばれるものです。

「懲役」「禁錮」「拘留」の違いは?

「懲役」とは、受刑者が拘置され所定の作業を科せられる刑罰です。

刑務作業は、受刑者の勤労意欲を高め、職業上有用な知識および技能を習得させるという目的で行われるもので、1日8時間、週に5日間となります。

刑務作業では、1カ月約4,000円程度の作業報奨金が支給されます。

一方、「禁錮」とは、受刑者が拘置されるだけの刑罰となりますが、刑務所で寝転がっていることは許されず、読書または運動をするという決まりがあります。

なお、「禁錮」の受刑者でも、希望すれば刑務作業を行うことは可能です。

「拘留」は1日以上30日未満の範囲で拘置される刑罰で、禁錮の短期版とも言えますが、「懲役」や「禁錮」とは違い執行猶予が付けられることがないので、この判決は必ず実刑となります。

刑法に「拘留」が定められている主な犯罪には、公然わいせつ(第174条)、暴行(第208条)、侮辱(第231条)などがあります。ただし、近年では年間に数人程度しか「拘留」の刑罰を受けた受刑者はいません。

罪を犯した者から財産を奪う「財産刑」

刑事事件を起こして有罪判決を言い渡された者から財産を奪う刑罰が「財産刑」です。

「財産」というと家財道具が差し押さえられるようなイメージがありますが、「財産刑」はもっと簡単なもので、代表的な財産刑は「罰金刑」となります。

罰金のほとんどは現金支払い

有罪とされた人の大半に対して「罰金刑」が科され、有罪が確定後に金銭を納付することになります。

「財産刑」は罪を犯した者の財産を取り上げるのですが、罰金を支払わなかった際に差し押さえられる以外は、本当に家財道具や不動産に手を付けられることはありません。

金銭で支払えない場合は、労役場での労務に従事する必要があります。

以上のように、刑事事件の刑罰は法律学的に見て「生命刑」「自由刑」「財産刑」に分けられます。

被告人あるいは受刑者となってしまった場合には、この区別はあまり関係ありませんが、知識として知っておくとよいでしょう。

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