刑事事件の被疑者は起訴されると被告人となり、拘置所へと移送される
- 2024年7月16日
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検察が被疑者の起訴を決める
刑事事件の被疑者は逮捕された後、原則として警察に最長48時間にわたり身柄を拘束され、その後検察に送検されてさらに24時間の間に起訴されるか、不起訴となるかが決められることになっています。
しかし検察でのたった24時間で、被疑者にとって非常に重要な起訴・不起訴の判断を行うのは難しいという名目で、たいていの場合は留置場または拘置所で10日間の勾留、そしてさらに10日間の勾留延長が裁判所によって認められてしまいます。
警察が罪を犯したという確証があり、十分な証拠を揃えたうえで逮捕した被疑者ですから、そのまま起訴してもよいのではと考えてしまいますが、日本では刑事事件の公訴権、いわゆる裁判を起こす権利は、下記刑事訴訟法にも定められているように、検察官のみに認められているものです。
刑事訴訟法
第二百四十七条 公訴は、検察官がこれを行う。
第二百四十八条 犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
検察庁に所属する検察官は、一般的に検事と呼ばれ、勾留中に行われる検事調べにおいて、被疑者を起訴するかどうかを決めるわけです。警察は逮捕ができても被疑者を裁判にかけることはできず、その役割は検察が担う一方で、検察には逮捕権も付与されています。特に社会的に影響の大きい政治家や有名人の事件は、警察を差し置いて検察が逮捕を行うことがよくあります。
検察が起訴を決めるのはいつか?
被疑者が勾留されている間、警察による取調べと、検事調べが行われますが、もしこの間に容疑を固めきれず、勾留満期が到来して処分保留のままで被疑者を釈放してしまったら、被疑者が真犯人だった場合に逃亡してしまう可能性があります。
そのため、検察が起訴か不起訴を決めるのは勾留満期前となり、実際の刑事事件の手続きでは、この勾留期間中に処分が決定できないような事件はほとんどないとされています。一方で、複雑な事件や、社会的に影響の大きい事件ならまだしも、警察が逮捕時に容疑を固めており、検察もその内容に疑いがなく起訴相当と考えた時には、すぐにでも起訴されてもおかしくはありません。
刑事訴訟法第260条には、「速やかに」という文言もあります。
刑事訴訟法
第二百六十条 検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について、公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をしたときは、速やかにその旨を告訴人、告発人又は請求人に通知しなければならない。公訴を取り消し、又は事件を他の検察庁の検察官に送致したときも、同様である。
しかし現実的に、たいていの場合は勾留満期まで被疑者は拘置所または留置場で身柄の拘束を受けてしまいます。そして最終調べと呼ばれる勾留満期前の最後の検事調べで、被疑者に対して検察官が起訴の決定を伝える場合もありますが、検察官の判断によります。
警察と検察が描いたシナリオの通り、処分の決定は勾留満期前に決まっているはずですが、満期より前に釈放されたり、起訴されたりということは少ないようです。
検察官は、一人ひとりが公訴権を持つ
法令上では、検察庁の検察官、いわゆる検事は、一人ひとりが独自に起訴する権利を保有しています。しかしそれはあくまでも建前で、実際の検察庁内では、起訴あるいは不起訴の決定は上司などの助言を受けて決定されることも多いようです。つまり、勾留満期前の取調べで検事が被疑者に起訴決定を宣言するということは、最終調べをする前からすでに起訴することが決まっているということです。
このように遅々として進まない刑事事件手続きを、ただ待っているだけですと、大切な被疑者の人権が阻害され、社会復帰をするチャンスも失われてしまいます。弁護士に相談して、勾留理由開示請求、勾留の取消請求、あるいは準抗告といった手段を講じてもらい、不当な勾留から逃れられるようにしましょう。
また、被疑者を勾留しておく留置場の光熱費、そして被疑者が食べる食費は、税金で賄われており、無意味な身柄拘束は税金の無駄使いです。このような細かいことは、実際に自分自身や家族、友人・知人が逮捕・勾留された人でないと気づきません。勾留満期というのはあくまで最長のリミットであり、それより早く手続きを進めても、何の問題はないのです。
起訴なら「起訴通知書」、不起訴なら「釈放指示書」
被疑者は勾留満期日には検察官によって起訴されるか、不起訴処分となるかが決められていますが、それらを示す書状である「起訴通知書」あるいは「釈放指示書」を示されて事実を知ることになります。
これらの書類は、手続き上は前日には準備されているはずで、その決定はそれ以前に行われているのですが、ほとんどの場合は勾留満期日に被疑者に対して通告されるのです。
「起訴通知書」とは
検察官が被疑者の起訴を決定した場合、通常は勾留満期日の前日までに検察から「起訴通知書」という、起訴確定の書類が検察から届きます。これは処分通知書として在宅捜査となり勾留されていない場合にも届けられるものです。
刑事事件で逮捕され勾留を受け、身柄が拘束されたまま起訴が決まると、通常は「起訴通知書」が示されますが、これは「あなたを正式に起訴しました」という通知書で、裁判を起こして裁判所に提出される「起訴状」とは違います。「起訴通知書」には、被疑者名、罪名、事件番号や処分年月日などが簡潔に書かれているだけです。
逮捕されている被疑者は留置場や拘置所に身柄を拘束されたまま起訴されることになり、その後は起訴勾留という2カ月間という長期の勾留となり、その間に判決が出なければ、さらに1カ月単位で更新され、期限はありません。ただしこの際、後述する保釈制度の利用が可能となりますので、弁護士と相談して保釈申請を行い、裁判に臨む準備をすることをお勧めします。
「釈放指示書」が来れば、即釈放
上記の「起訴通知書」は、勾留満期日の前日までに届くことが多いそうです。そのため、勾留満期日の前日に「起訴通知書」が届けられなかったら、不起訴処分になったという可能性が高いとも言えるでしょう。しかし「起訴通知書」は当日届くこともあり、再逮捕という可能性もありますので、心当たりがある人は注意が必要です。
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不起訴処分による釈放は、突然のようにやってきます。勾留満期日、理由も説明されずにいきなり呼び出され、「釈放指示書」を見せられ、釈放が宣言されるようです。そしてその場で逮捕時に着ていた衣服や所持品を、リストとチェックしながら返却され、逮捕後初めて手錠や腰縄のない状態で、留置場や拘置所の扉から外に出ることができるのです。
この際、取調べのために押収された証拠品の返却についての打ち合わせも行われますが、持ち帰るか後で取りに来るか、着払いの宅配便で送るか、捨ててしまうかなど、とにかく事件に関するもの一切を放り出す勢いで手続きが進められます。
また注意しておかなければならないのは、留置場や拘置所の外に出された後は、もちろん送り届けはなく、交通費の支給もないということです。逮捕時に十分なお金を持っていなかったり、釈放時に行われる留置場や拘置所内での経費精算で足りなくなったりしたら、家に帰ることもできません。
最寄りの警察署や検察庁の施設ならまだしも、広域捜査の対象となって地方から東京に連行されていた場合には、どうしようもありません。事前に弁護士を通じて勾留満期日を知らせ、家族や友人・知人に迎えに来てもらうようにすることをお勧めします。
以上、いずれの結果になるとしても、起訴か不起訴かの処分決定は、勾留満期日に下されるパターンがお約束になっていて、起訴される場合には、明らかに勾留満期日より前に処分は決定されており、満期日までの数日間は被疑者が無駄に勾留されているわけです。検事が下すだろう処分を、弁護士を通して急かすことも可能なのですが、不起訴の可能性のある事件の場合には、やたらに検事を急がせるのはお勧めできません。
このような場合にも、駆け引きを弁護士に相談し、最適な対応を取るようにしましょう。
起訴されたら、被疑者は被告人となる
刑事事件の被疑者が起訴されると、それまでの被疑者から被告人という立場に変わります。しかし法的には、まだ「推定無罪の人」で、裁判が結審し有罪の判決が下るまでは、受刑者のように労役を強制されるようなことはありません。
被告人になったことで変わるのは、身柄が拘置所に移送されることです。本来、刑事事件の手続きにおいては、逮捕後に勾留が決定した時点で拘置所に送られるのが正しいのですが、現在の現場では起訴されて被告人になった時点で拘置所に移送されるのが慣例です。
被告人となったら、「保釈制度」の利用を!
起訴後、その日のうちに拘置所に送られることもないようです。通常は事務手続きなどで、起訴決定から早くとも一週間ほどは警察署の留置場暮らしが続くのが実情です。ただし起訴された後の勾留は、「起訴勾留」といって、逮捕から勾留という流れとは別の意味の身柄拘束となり、勾留満期の20日間を過ぎても、引き続き釈放されず自由を奪われ続けることになります。
しかし、立場が被告人になった時点で、一時的に一般社会に戻って社会生活を送りながら裁判を受ける「保釈制度」が使えるようになります。保釈許可が下りて保釈金を納付すれば、一般社会に戻ることもできるわけです。一般的には、逮捕後すぐにでも保釈金を積めば保釈されると思われていますが、この制度は起訴された後にならないと利用することはできません。
弁護士に依頼して保釈申請をしてもらい、社会生活の中で裁判に臨む準備を整えましょう。
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