控訴と上告とは?違いと特徴、上訴の手続きの流れを解説

控訴と上告とは?

刑事裁判の控訴・上告とは、被告人が裁判所による判決に対して不服を申し立て、公正な審理を求める手続きのことをいいます。
申し立てが認められた場合、その判決が適正なものであったか再度、審理が行われ、一度出た判決内容が取り消しとなる可能性があります。

本記事では、控訴と上告の違いやそれぞれの特徴、手続き、さらにこれらの手続きにおける弁護士の役割などについて解説します。

控訴とは

控訴とは、第一審判決に対する不服申立てを指します。被告人や検察官が第一審判決に不満を持ち、再審理を求める手続きです。

刑事裁判で最初に行われるのが、第一審です。もし第一審の判決に不満がある場合、被告人は上級の裁判所である高等裁判所(控訴審)に審理を求めることができます。

控訴は、第一審の判決を見直し、公正な判断を求めるための重要な権利です。

控訴できるのは一審判決を受けた被告人または検察官

控訴権を有するのは、第一審で判決を受けた被告人および検察官です。被告人は自己の無罪を主張したり、減刑を求めたりするために控訴できます。

一方、検察官も判決に不満がある場合や、より重い刑罰を求める場合に控訴を行います。

上告とは

上告とは、控訴審の判決に対する不服申立てです。控訴審の判決に対して、さらに上級の裁判所に再審理を求める手続きを指します。上告は、法律の適用に誤りがある場合や、判決に重大な瑕疵があると考えられる場合に行われます。

三審制と上訴の仕組み

控訴・上告
刑事裁判における三審制とは、同じ事件について三段階の審理を受けることができる制度です。

三審制は公正な裁判を確保し、被告人の人権を救済するために設けられています。
第一審の判決に不服がある場合、被告人や検察官は控訴審に控訴でき、さらに控訴審の結果に不満がある場合は上告の手続きを行うことが可能です。

こうした控訴・上告といった上級の裁判所へ審理のやり直しを申請する手続きのことを上訴と呼び、裁判の結果や適用された法律判断に対して異議を申し立てることができます。

日本の裁判制度は三審制

三審制を採用する日本の裁判制度では、第一審、第二審、そして最高裁判所と3回にわたって審理を受けられます。
第一審は簡易裁判所や地方裁判所、あるいは家庭裁判所が審理を行い、第二審は控訴審を高等裁判所が、最終的に上告審を最高裁判所が行います。

控訴・上告(上訴)は、これら三段階の審理をつなぐ手続きです。

控訴・上告の流れ

控訴から上告までの手続きは以下のように進行します。

控訴

控訴は、第一審の判決に不服がある場合に行われます。
被告人または検察官は、地方裁判所や簡易裁判所で第一審判決が下された日から14日以内に控訴を申し立てることができます。
※裁判で判決を言い渡される時、裁判官は必ず最後に、判決に不服がある時は判決日の翌日14日以内に控訴の手続きをしてください、などと伝えてくれます。

控訴の手続きは、まず申立書を、第一審が行われた裁判所に提出しますが、これは控訴を行う旨を記すだけのもので、申立書の時点で控訴の理由までは書く必要はありません。その後裁判所が指定する期日までに、控訴をする理由をまとめた控訴趣意書を書面として提出しますが、その期日は事件の内容によって勘案されます。

控訴審では、高等裁判所が再審理を行い、事実認定の誤りの有無、法令適用の妥当性などを検討します。
控訴審の結果によって、第一審の判決が維持されることもあれば、変更されることもあります。

上告

上告は、控訴審の判決に対して不服がある場合に行われます。
上告の申立ては、控訴審判決が下された日から14日以内に行わなければなりません。

上告審は最高裁判所で行われ、主に法令解釈の誤りや重大な手続き違反、判例違反が争点となります。
上告審では、新たな事実認定は行われず、法律問題に焦点を当てて審理が進められます。

不利益変更禁止の原則

なお、被告人のみが上訴を行った場合、上級審の判決でもともとの判決よりも重い刑が科されることはありません。
たとえば控訴審が出す判決は第1審の判決より重くなることはなく、上告審の判決が控訴審の判決より重くなることもありません。

これを不利益変更禁止の原則といい、被告人の権利を守ることを目的に刑事訴訟法第402条に定められています。

第四百二条

被告人が控訴をし、又は被告人のため控訴をした事件については、原判決の刑より重い刑を言い渡すことはできない。
刑事訴訟法 第402条より引用

ただし、検察官が上訴を行った場合はこの限りではありません。検察官による上訴の場合は、上級審で量刑が重くなることもあり得ます。

控訴の特徴と手続き

控訴審では、第一審が行った判断の当否を審査します。

控訴に必要な要件

控訴は、第一審判決に不服がある場合に、控訴審で再審理を求める手続きです。控訴の手続きをするためには以下の要件が必要になります。

控訴理由

控訴を行うためには控訴理由が必要です。この控訴理由には絶対的控訴理由と相対的控訴理由があります。

絶対的控訴理由

訴訟手続きに関して重大な法令違反がある場合です。
絶対的控訴理由が認められる場合、ただちに第一審判決が破棄されます。

相対的控訴理由

判決に明らかに影響を及ぼすことが認められる場合に限って認められる控訴理由です。

判決に対して不満な点があれば、どのような理由でも控訴することが可能ですが、裁判所から認められるものとしては

  • 法令適用の誤りの場合
  • 量刑不当の場合
  • 事実誤認の場合

の3パターンがあります。
こられのうち最も多いのは、量刑不服による控訴、被告人が判決で下された罪は重すぎると控訴するパターンです。

実務では、判決の法令違反を問う絶対的控訴理由よりも、判決内容に対する不服・不当を問う相対的控訴理由による申し立ての方が多いのが通常です。

期限内の控訴申立て

控訴申立てには、第一審判決の告知を受けた日から14日以内という期限があります。
裁判所に控訴を受理してもらうには、この2週間という期限内での申立てが必要です。

控訴審判決の種類

控訴審の判決にはいくつかの種類があります。

控訴棄却判決

控訴棄却判決とは、控訴理由が認められず、第一審の判決がそのまま維持される場合の判決です。この場合、控訴した側の主張は退けられます。

控訴棄却決定

控訴棄却決定は、控訴に形式的な不備がある場合や控訴理由が書面審査の段階で明らかに認められない場合に行われるものです。この場合、実質的な審理は行われません。

破棄判決

破棄判決は、第一審の判決に法的な誤りがあると認められた場合に、その判決を取り消す判決です。
この場合、以下いずれかの判決が行われます。

  • 自判(控訴裁判所が自ら判断する)
  • 第一審への差戻し
  • 移送(第一審の裁判所が専属管轄違反であった場合。正しい裁判所に移送し審理をやりなおす)

被告人側としては第一審の判決に不満があって控訴するわけですから、第一審判決を破棄して、自分により有利な判決を受けることを目標にすることになります。

上告の特徴と手続き

上告審となる最高裁では憲法違反や判例違反の有無といった角度から、控訴審の判断のチェックが行われます。

上告理由

上告は、控訴審の判決に対してさらに不服がある場合に行う手続きです。主な上告理由としては以下のようなものがあげられます。

法令解釈の誤り

控訴審で適用された法律の解釈に誤りがある場合

重大な手続き違反

控訴審の手続きに重大な違反があった場合。

憲法違反・憲法解釈の誤り

判決が憲法に違反している場合

判例違反

判決が判例に違反している場合

これらの上告理由が認められない場合、上告は棄却されます。

控訴理由に比べ上告理由は非常に限定的

控訴に比べると、上告理由は非常に限定的な条件を満たす必要がある点には注意が必要です。

上告審は、一般に法律審とも呼ばれ、上告審では基本的に事実認定の見直しは行われません。
第一審・控訴審までに行った事実認定を元に、憲法や法律解釈の違反、過去の最高裁・高裁判例との相違など控訴審の判断が適正かどうかを審理します。

そのため、実際的な事件に関する認否・事実認定については、まずは第一審、遅くとも控訴審までに主張することが非常に重要です。

上告審判決の種類

控訴審と同様に、上告審を行った結果出される判決にも、いくつか種類があります。

上告棄却判決

上告棄却判決とは、上告理由が認められず、控訴審の判決がそのまま維持される場合の判決です。この場合、上告した側の主張は退けられます。

上告棄却決定

上告棄却決定は、上告の手続きに形式的な不備があった場合や書面審査の段階で上告理由が明らかに認められない場合に、決定で上告を棄却するものです。この場合、実質的な審理は行われません。

破棄判決

破棄判決は、控訴審の判決に法的な誤りがあると認められた場合に、その判決を取り消す判決です。
この場合、最高裁は以下いずれかの判決を行うことになります。

  • 自判(最高裁自らが判断する)
  • 第一審または控訴審への差戻し
  • 移送(第一審または控訴審の裁判所が専属管轄違反であった場合。正しい裁判所に移送し審理をやりなおす)

被告人の立場としては原判決を破棄する内容の判決が望ましいといえますが、その場合は第一審に事件が差し戻され、最初から審理がやり直される可能性があります。
場合によっては裁判が長期化する可能性もあります。

控訴・上告に関して弁護士ができること

刑事裁判における控訴および上告は、第一審判決に不服がある場合、被告人の立場を守るための非常に重要な手続きです。
刑事事件の裁判で控訴・上告の手続きを行う際、弁護士は極めて重要な役割を担います。

最重要な第一審への注力

刑事裁判では第一審での弁護活動が非常に重要です。
控訴や上告は必ずしも成功するとは限りません。認められたとしても判決の確定まで時間がかかります。

できれば第一審、もっといえば第一審が始まる前の起訴・不起訴判断の段階で、被告人に有利な内容で事件に決着がつくのが理想です。

具体的には、弁護士は次のような点に注力して第一審を戦います。

事実調査と証拠収集

被告人に有利な証拠を徹底的に収集し、事件発生時に起きた事実の正確な把握に努めます。

戦略的な弁護活動

裁判戦略を立て、証人尋問や証拠提出などの弁護活動を行います。

被害者との示談交渉を行い、示談を成立させることで量刑上有利に扱われるようにする活動も行います。

さらに、法的な観点から被告人に有利な主張を展開します。

法的な観点から見た控訴・上告の可否検討

第一審判決に不服だった場合でも、申し立てをすれば必ず控訴や上告が認められるものではありません。

第一審判決後、弁護士は被告人と相談し、控訴や上告をして破棄されずに控訴審・上告審へと持ち込めるか、慎重に検討する必要があります。
また、控訴・上告が認められても最終的に棄却となれば、裁判が長期化する分の時間とコストだけがかかる結果になるだけです。控訴審・上告審で被告人に有利な判決を獲得できるかの見立ても絶対に欠かせません。

控訴や上告の申し立ては事実誤認など申し立て理由も限定されています。
そのため上訴を行うためには判決文の分析や、判決に対する反論となり得る新証拠を確保する作業が必要となります。

具体的には次のような作業を行います。

判決の分析

第一審や控訴審の判決文を詳細に分析し、法令適用の誤りや事実認定の問題点を洗い出します。

新証拠の検討

新たな証拠が発見された場合、その証拠がどの程度判決に影響を与えるかを評価します。

法的理由の精査

上告に必要な法的理由(例:法令解釈の誤り、重大な手続き違反など)を検討し、上訴が認められる可能性を判断します。

申立て~有利な判決獲得のサポート

控訴や上告の手続きが進む中で、弁護士は以下のようなサポートを提供します。

控訴・上告の申立て

法定の期間内に適切な手続きで控訴・上告の申立てを行います。この申立書の作成には、法的な知識が不可欠です。

書面作成と提出

上訴に必要な書面を作成し、裁判所に提出します。これには、控訴趣意書や上告趣意書などが含まれます。この書面に不備があったり、提出期限に違反があったりすると決定で上訴が棄却されてしまいます。そのため、必要な書面を正確に作成し、期限内に提出することは重要です。

弁護活動

控訴審や上告審においても、弁護人は被告人の利益を守るために弁護活動を行います。

たとえば新たに発見された証拠がある場合は裁判所に対してその証拠を提出し、被告人に有利になるように訴えかけます。

まとめ

控訴・上告の現実と争い方

刑事事件の裁判では、控訴審や上告審でも、映画やテレビドラマのようなドラマチックな展開が見られることは少ないと言わざるを得ません。
そして、実際のところ、一般人が起こした刑事事件が最高裁判所で争われるケースは稀です。

控訴審の場合、基本的に第一審では争われなかったような新事実が上訴を行う側から提出されない限り、審理さえ開かれずに控訴が棄却されるのが普通です。そのため、弁護士や家族や友人・知人が力を合わせ、被告人が無罪と信じるならその証拠を探し出し、もしくは量刑を減じるための努力をする必要があります。

上告に関しては、これまでまったく前例のなかった事件や、判決に憲法違反の疑いがある事件というケースはなかなかないため、審査の対象にもならず棄却されることが多いのが現実です。

以上のことを考え合わせると、冤罪事件など特殊なケースを除き、第一審に全力を尽くして被告人にとって最善の判決を導き出せるような努力をするべきでしょう。

刑事事件の裁判対応は経験豊富な弁護士に相談を

刑事裁判における控訴や上告は、被告人にとっては自分の権利を守るための非常に重要な手続きです。

第一審判決に不満があり、控訴や上告を行うようなケースでは、刑事事件の経験豊富な弁護士の存在は判決の成否を左右する重要なカギとなります。

弁護士は、第一審から控訴、上告に至るまで、すべての手続きにおいて被告人の権利を守るための活動を行います。
ご自身や家族が逮捕されてお悩みの場合、速やかに弁護士へとご相談ください。
特に、控訴や上告も視野に入れた対応が必要となる場合は、刑事事件の取り扱いが豊富で、控訴審や上告審に関わった経験のある弁護士に相談し、手続きを依頼することをお勧めします。

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